【業界比較】大成建設・大林組・清水建設・鹿島建設、スーパーゼネコン4社の2026年3月期決算を財務指標で比較する

業界比較建設株財務諸表ゼネコン
目次
  1. 規模:鹿島建設が売上高3兆円超でトップ、増収は清水建設・鹿島建設の2社のみ
  2. 収益性:営業利益は4社とも大幅増益、ROEトップは大成建設
  3. 財務健全性:自己資本比率は34.9〜40.0%、ネットキャッシュは大林組だけがプラス
  4. 市場評価:PERは清水建設が9.68倍で4社最低、配当利回りは3%前後で横並び
  5. まとめ:業態は似ていても、M&Aの進め方が財務指標の差を生んでいる

「ゼネコン株は横並びで代わり映えしない」と思われがちですが、2026年3月期決算を財務指標で並べてみると、同じスーパーゼネコンでも会社ごとの個性がはっきり見えてきます。特に近年各社が進めたM&Aの結果、ネットキャッシュの水準に明暗が分かれたのが今回の大きな発見でした。

この記事は、Quant Nestの「業界比較」シリーズ第8弾です。自動車業界編・商社業界編・銀行業界編に続き、今回は東証プライムに上場するスーパーゼネコン4社(大成建設・大林組・清水建設・鹿島建設)を取り上げます。いずれも決算期が3月末・会計基準も日本基準で統一されており、2026年3月期(2025年4月〜2026年3月)の通期決算を比較しています。詳しい数値は建設業界トップ4 財務諸表比較ツールで確認できます。

規模:鹿島建設が売上高3兆円超でトップ、増収は清水建設・鹿島建設の2社のみ

大成建設大林組清水建設鹿島建設
売上高2兆890.91億円2兆5,862.58億円2兆578.02億円3兆672.75億円
前期比△3.0%△0.2%+5.8%+5.3%

売上高でトップは鹿島建設の3兆672.75億円で、4社で唯一3兆円を超えています。前期比では清水建設(+5.8%)・鹿島建設(+5.3%)が増収を確保した一方、大成建設(△3.0%)・大林組(△0.2%)はわずかに減収でした。ただし後述の通り、減収の2社もこの期は大幅増益となっており、「増収より増益」を優先した期だったことが分かります。

収益性:営業利益は4社とも大幅増益、ROEトップは大成建設

大成建設大林組清水建設鹿島建設
営業利益1,879.73億円1,946.78億円1,186.69億円2,407.80億円
前期比+56.4%+36.6%+67.1%+58.5%
営業利益率9.0%7.5%5.8%7.8%
当期純利益1,700.04億円1,737.59億円1,266.17億円1,773.34億円
ROE(簡易値)17.63%13.63%12.96%12.51%
ROA(簡易値)6.15%5.45%4.77%4.88%

4社とも営業利益は前期比+36〜67%という大幅増益で、建築・土木事業の不採算工事一巡と受注採算の改善が業界共通の追い風になったことがうかがえます。中でも**清水建設は前期比+67.1%**と伸び率が最も高く、2024年3月期に計上した建築事業の営業赤字(不採算工事)からのV字回復が続いています。

ROE(自己資本利益率、簡易値)では大成建設の17.63%が4社で頭一つ抜けています。2024年に連結子会社化した東洋建設の寄与に加え、建築事業の利益率が前期比+590.6%(783億円)と急改善したことが主因です。大林組・清水建設・鹿島建設の3社は12〜14%台とほぼ横並びの水準になっています。

財務健全性:自己資本比率は34.9〜40.0%、ネットキャッシュは大林組だけがプラス

大成建設大林組清水建設鹿島建設
自己資本比率34.9%40.0%36.8%39.0%
有利子負債4,634.80億円3,440.64億円5,674.10億円8,331.33億円
現金及び現金同等物2,729.74億円4,160.28億円3,544.92億円3,922.73億円
ネットキャッシュ△1,905.06億円+719.64億円△2,129.18億円△4,408.60億円

自己資本比率は34.9〜40.0%というレンジに収まっており、業界横断まとめページで見ると自動車・商社業界(いずれも30%台後半)とほぼ同水準です。ゼネコンは工事代金の前受金・出来高払いという業態上、運転資本収支が比較的安定しやすいと言われますが、有利子負債・ネットキャッシュの水準は4社で大きく異なりました。

ネットキャッシュがプラスなのは大林組(+719.64億円)のみで、大成建設・清水建設・鹿島建設の3社はマイナスです。この差は各社が近年進めたM&Aの規模とタイミングによるところが大きく、大成建設は東洋建設、大林組は米GCON社(データセンター建設に強み)、清水建設はあおみ建設(土木・洋上風力)と、いずれも有利子負債の増減を伴う買収を実施しています。特に鹿島建設は4社で最も有利子負債残高が大きく(8,331.33億円)、海外の不動産開発事業(北米・欧州・アジア・大洋州)への投資規模の大きさが反映された結果と考えられます。

市場評価:PERは清水建設が9.68倍で4社最低、配当利回りは3%前後で横並び

大成建設大林組清水建設鹿島建設
株価12,470円3,012円2,360円4,897円
PER(会社予想)13.46倍13.19倍9.68倍13.38倍
PBR(実績)2.18倍1.66倍1.58倍1.65倍
配当利回り(会社予想)3.05%3.12%3.26%2.98%
時価総額2兆349.28億円2兆837.36億円1兆6,913.87億円2兆3,684.63億円

PERは清水建設の9.68倍が4社で最も低く、他3社(13.19〜13.46倍)と比べて割安な水準で評価されています。一方でPBRは大成建設が2.18倍と4社で唯一2倍を超えており、ROEの高さ(17.63%)が株価純資産倍率にも反映されていると見られます。配当利回りは2.98〜3.26%とどの銘柄も3%前後に収まっており、市場評価の面では4社の差は利益率・自己資本比率ほど大きくありません。

まとめ:業態は似ていても、M&Aの進め方が財務指標の差を生んでいる

4社とも国内建築・土木を中核とする似た事業モデルを持ちながら、2026年3月期は営業利益の伸び率・ROEの水準・そしてネットキャッシュの符号という3つの点で、はっきりとした差が生まれた期でした。特にネットキャッシュの明暗は、各社が「どの規模のM&Aを、どのタイミングで、どう資金調達したか」という経営判断の違いをそのまま映し出しています。単年度の数字だけでなく、こうした資本配分の姿勢の違いにも注目してみると、同じ「ゼネコン株」でも投資判断の切り口が広がるはずです。

より詳しい数値・チャートは建設業界トップ4 財務諸表比較ツールで、他業界との相場観の違いは業界横断まとめページでご確認いただけます。

出典・参考資料

  1. 大成建設「2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」(2026年5月14日公表)取得日: 2026年9月11日
  2. 大林組「2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」(2026年5月13日公表)取得日: 2026年9月11日
  3. 清水建設「2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」(2026年5月12日公表)取得日: 2026年9月11日
  4. 鹿島建設「2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」(2026年5月14日公表)取得日: 2026年9月11日

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