更新日: 2026年10月5日
PBR(株価純資産倍率)とは
Price Book-value Ratioの略。株価が1株あたり純資産(解散価値)の何倍まで買われているかを示す指標。PBR1倍は「株価=解散価値」の目安とされます。
かみ砕いた説明
PBR(Price Book-value Ratio、株価純資産倍率)は、株価が1株あたり純資産(BPS)の何倍まで買われているかを示す指標です。純資産は、会社の資産から負債をすべて差し引いた後に株主に残る価値で、「会社をいま解散して資産を分配したら、株主にいくら残るか」という意味で解散価値とも呼ばれます。
PBR1倍は「株価が解散価値と同じ水準」であることを意味します。PBRが1倍を下回るということは、理論上は「会社を続けるより、解散して資産を分配した方が株主にとって価値が高い」と市場から評価されている状態にあたります。
計算式と計算例
PBR = 株価 ÷ 1株あたり純資産(BPS)= 時価総額 ÷ 純資産
当サイトの銀行業界トップ5 財務諸表比較ツールに掲載している三菱UFJフィナンシャル・グループで計算すると、
- 株価: 3,525円(2026年7月30日終値)
- 1株あたり純資産(2026年3月期末): 1,973.31円
- PBR: 3,525円 ÷ 1,973.31円 ≒ 1.79倍
となります。市場は同社の帳簿上の純資産の約1.8倍の値段をつけている、という意味です。
「PBR1倍割れ」と東証の要請
東京証券取引所は2023年3月、プライム市場・スタンダード市場の上場企業に対して「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」を要請しました。対象は両市場の全上場企業ですが、なかでもPBRが1倍を割り込んでいる企業には、改善に向けた取り組みが強く求められました。PBR1倍割れは、会社が株主から預かった資本に見合う利益を上げられていない(ROEが株主の期待する収益率=資本コストを下回っている)と市場がみなしているサインと解釈されることが多いためです。
この要請以降、自社株買いや増配、不採算事業の見直しなどを打ち出す企業が増え、PBRは個人投資家にとっても身近な指標になりました。
業界によって水準が大きく異なる
当サイトの業界比較ツールに掲載している各社のPBRを、業界ごとに単純平均すると次のとおりです。
| 業界(対象企業数) | PBRの平均 | 業界内の例 |
|---|---|---|
| 小売(5社) | 5.96倍 | 良品計画 13.36倍/セブン&アイ 1.35倍 |
| 精密機器・FA機器(3社) | 3.86倍 | キーエンス 6.10倍 |
| 通信(3社) | 2.51倍 | ソフトバンク 4.05倍/日本電信電話 1.28倍 |
| 商社(5社) | 1.83倍 | 伊藤忠商事 2.15倍 |
| 建設(4社) | 1.77倍 | 大成建設 2.18倍 |
| 銀行(5社) | 1.62倍 | 三菱UFJ FG 1.79倍 |
| 不動産(5社) | 1.25倍 | 野村不動産HD 0.96倍 |
| 自動車(5社) | 0.66倍 | スズキ 1.17倍/日産 0.24倍 |
自動車業界は5社中4社が1倍割れで、スズキだけが1倍を上回っています。トヨタ・ホンダ・日産・スズキ・マツダの決算比較では、スズキが5社の中でROE・営業利益率・自己資本比率のいずれも最高水準にあり、PBRの高低が収益力・資本効率の違いを反映している可能性を紹介しています。
一方、小売業界の良品計画やファーストリテイリング(10.55倍)のように、純資産の10倍以上の値段がつく企業もあります。店舗網やブランド、商品開発力といった「帳簿に載らない稼ぐ力」と成長期待が、株価に大きく織り込まれているためです。
PBRとROE・PERの関係
PBRは、ROEとPERの掛け算に分解できます。
PBR = ROE × PER
この式から、PBRを高めるには「ROE(資本効率)を上げる」か「PER(市場の成長期待)を高める」かのどちらかが必要だと分かります。たとえばトヨタはROE 9.6%(簡易値)・PER 12.9倍で、掛け合わせるとおよそ1.2倍になりますが、実際のPBRは0.97倍です(PERが会社予想利益、ROEが実績利益に基づくため、式どおりには一致しません)。なお、日産のように実績ROEがマイナス(-11.1%)の企業では、この式はそもそも成り立ちません(PERは翌期の会社予想利益で算出しているため)。それでも、資本を目減りさせる赤字決算がPBR0.24倍という低い評価につながっていると読むことはできます。
よくある誤解・注意点
- PBR1倍割れ=割安とは限らない: 低いROEが続く見通しであれば、PBRが低いのは市場の妥当な評価である可能性があります。PBRだけで「お買い得」と判断するのは早計です
- 純資産の中身は帳簿価格: 土地などは取得時の価格で計上されていることが多く、時価とのずれ(含み益・含み損)はPBRに反映されません。古くから不動産を保有する企業は、実質的な解散価値が帳簿上より大きいこともあります
- 銀行・保険などは別の物差しも必要: 金融機関の純資産は規制や有価証券の評価差額の影響を受けやすく、PBRの水準感が事業会社とは異なります
- 自社株買いでも変化する: 自社株買いで純資産が減ると、株価が変わらなくてもPBRは上がります。PBRの改善が「稼ぐ力の向上」によるものか、「資本の圧縮」によるものかを見分けることが大切です
- 手元の現金とあわせて見ると評価の厳しさが分かる: ホンダはPBR0.52倍で、製造業単体のネットキャッシュ(約3.3兆円)が時価総額(約7.2兆円)の半分近くに達しています。市場が現金を除いた事業部分をどれだけ低く評価しているかを考える手がかりになります