更新日: 2026年10月5日

ROE(自己資本利益率)とは

Return On Equityの略。株主が出した資本(自己資本)に対して、企業がどれだけ効率的に利益を生み出したかを示す指標です。当期純利益÷自己資本で算出します。

かみ砕いた説明

ROE(Return On Equity、自己資本利益率)は、株主が出資した資本と、これまでに積み上げた利益(あわせて自己資本)に対して、企業が1年間でどれだけの利益を生み出したかを示す指標です。株主の立場から見た「預けたお金の運用利回り」にあたり、数字が高いほど株主の持ち分を効率よく増やしていると評価されます。

東証が上場企業に「資本コストや株価を意識した経営」を求める文脈や、機関投資家の議決権行使の基準(ROEが一定水準を下回る企業の経営トップ選任議案に反対する、など)でも、ROEは中心的に参照される指標です。日本企業では8%が一つの目安として語られることがあります。

計算式と計算例

ROE = 当期純利益 ÷ 自己資本(= 1株あたり利益 ÷ 1株あたり純資産)

当サイトの自動車業界トップ5 財務諸表比較ツールでは、5社を同じ方法で比べるため、1株あたり利益(EPS)÷ 1株あたり純資産(BPS、期末値)で簡易ROEを算出しています。トヨタ自動車の2026年3月期で計算すると、

  • 1株あたり利益: 295.25円
  • 1株あたり純資産(期末): 3,062.82円
  • ROE: 295.25円 ÷ 3,062.82円 ≒ 9.6%

となります。なお、計算に使う当期純利益は「親会社株主に帰属する当期純利益」、自己資本は純資産から新株予約権と非支配株主持分を除いた額で、どちらも子会社の他の株主の取り分を含めない、親会社の株主から見た数字です。各社が決算短信で公表するROEは、分母に期首と期末の自己資本の平均を使うのが一般的なので、期末値を使う簡易ROEとは少しずれることがあります。

ROEは「ROA × 財務レバレッジ」に分解できる

ROEを読み解くうえで最も重要なのが、次の分解です。

ROE = ROA(当期純利益 ÷ 総資産)× 財務レバレッジ(総資産 ÷ 自己資本)= ROA ÷ 自己資本比率

ROAは資産全体でどれだけ稼いだかという「事業の稼ぐ力」、財務レバレッジは借入などの負債をどれだけ使っているかを表します。つまり同じROEでも、本業の稼ぐ力が高いから高いのか、借入を多く使っているから高いのかで、中身がまったく違うことになります。

同じROEでも中身が違う実例

当サイトの業界比較ツールに掲載している数値から、ROEがほぼ同じでも中身が対照的な組み合わせを並べます。

会社・業界ROEROA自己資本比率
ソフトバンク(通信)20.6%3.3%16.0%
ファーストリテイリング(小売)19.1%11.2%58.9%
銀行業界の平均(5社)9.9%0.4%4.4%
精密機器・FA機器業界の平均(3社)9.9%9.1%91.8%

ソフトバンクとファーストリテイリングはどちらもROE約20%ですが、ソフトバンクは自己資本比率16%という高いレバレッジでROA 3.3%をROEまで押し上げているのに対し、ファーストリテイリングは自己資本比率が6割近くあり、ROA 11.2%という本業の高い収益力がROEを支えています。

業界平均で見ても、銀行業界と精密機器・FA機器業界のROEはどちらも9.9%とほぼ同水準ですが、銀行業界は自己資本比率4%台という極端なレバレッジでROA 0.4%を底上げした数字、精密機器業界はレバレッジにほとんど頼らず、高いROAがほぼそのままROEになった数字です。業界横断まとめの資本効率マップでは、8業界をROA(横軸)と自己資本比率(縦軸)の平面上に並べ、ROEの「質」の違いを可視化しています。

業界ごとのROEの水準

業界(対象企業数)ROEの平均
通信(3社)15.0%
建設(4社)14.2%
小売(5社)11.4%
商社(5社)11.3%
銀行(5社)9.9%
精密機器・FA機器(3社)9.9%
不動産(5社)9.2%
自動車(5社)2.0%

自動車業界の平均が低いのは、2026年3月期に最終赤字となったホンダ(-3.5%)・日産(-11.1%)が平均を押し下げているためです。黒字の3社ではスズキが13.0%と最も高く、トヨタ・ホンダ・日産・スズキ・マツダの決算比較でもスズキの資本効率の高さを取り上げています。

よくある誤解・注意点

  • ROEが高いほど良いとは限らない: 借入を増やしたり、自社株買いで自己資本を減らしたりするだけでもROEは上がります。ROAや自己資本比率とあわせて、レバレッジで作られた数字かどうかを確認しましょう
  • 赤字が続いて自己資本が減ると、黒字転換時にROEが跳ね上がる: 分母の自己資本が小さくなっているためで、実力以上に良く見えることがあります
  • 一時的な利益に左右される: 資産売却益などの特別利益で当期純利益が膨らむと、その年だけROEが高く出ます。複数年の推移で見るのが基本です。逆に、減損損失などの特別損失が出た年は、本業が堅調でもROEが大きく落ち込みます
  • PBRとの関係: PBR = ROE × PER の関係があり、ROEが低い企業はPBRも低く評価されやすい傾向があります