業界横断まとめ
自動車・商社・銀行・通信・小売・精密機器・FA機器・不動産・建設の8業界について、各業界ページで比較した個別企業の財務指標を業界ごとに集計し、「この業界の目安値」を1画面で横並び比較します。個別銘柄同士の比較ではなく、業界としての相場観の違いを把握することが目的です。数値の詳細・算出根拠は各業界ページをご覧ください。
バリュエーション・マップ(PER × 売上高倍率)
各業界の代表値(PER・Revenue Multiple)を1点ずつのバブルとして、8業界を横並びで比較します。個別業界ページと同じ枠組みですが、ここでは個別企業ではなく業界の代表値をプロットしています。
縦軸はPrice Earnings Ratioの略。株価が1株あたり利益(EPS)の何倍まで買われているかを示す指標で、株価が利益水準に対して割高か割安かの目安として使われます。詳しくはこちら →、横軸は時価総額を売上高で割った倍率(PSR=Price to Sales Ratioとも呼ばれます)。利益がマイナスでPERが算出できない赤字企業でも、売上高さえあれば算出できる株価指標です。詳しくはこちら →の業界代表値で、いずれも対数スケールです。バブルの大きさは業界の代表的な時価総額を表します。バブルをクリックすると該当業界のページに移動します。
資本効率マップ(ROA × 自己資本比率)
Return On Equityの略。株主が出した資本(自己資本)に対して、企業がどれだけ効率的に利益を生み出したかを示す指標です。当期純利益÷自己資本で算出します。詳しくはこちら →という1つの数字が「本業の稼ぐ力(Return on Assetsの略。負債も含めた総資産全体に対して、企業がどれだけ効率的に利益を生み出したかを示す指標です。当期純利益÷総資産で算出します。詳しくはこちら →)」と「レバレッジ(総資産のうち、返済不要の自己資本(株主資本)がどれだけの割合を占めるかを示す指標。数字が高いほど負債への依存度が低く、財務的な余力が大きいとされます。詳しくはこちら →の低さ)」のどちらでできているかを分解して見るチャートです。銀行業界(自己資本比率4%台)は預金という負債が巨大なため構造的に低く、逆に精密機器・FA機器業界(同90%台)は実質無借金のため構造的に高いという、両極端な業界が揃ったことで軸の幅が大きく広がっています。
横軸は自己資本比率、縦軸はROA(簡易値)の業界代表値で、いずれも線形スケールです。バブルの大きさは業界の代表的な時価総額です。バブルをクリックすると該当業界のページに移動します。
業界による自己資本比率(レバレッジ)の違い
自己資本比率の平均値が低い(=財務レバレッジが高い)順に並べると、銀行業界(4%台)・通信業界(20%台)・不動産業界(30%台)・建設業界(30%台後半)・自動車業界(30%台後半)・商社業界(30%台後半)・小売業界(40%台後半)・精密機器業界(90%台)となります。この水準差は「どの業界が優れているか」ではなく、事業モデルの違いから生まれています。
- 銀行業界: 預金という負債で運用資産をまかなう業態のため、規制上も自己資本比率が低いことが前提になっている。
- 通信業界・不動産業界: 通信網や保有物件など、長期間にわたって収益を生む資産を有利子負債で調達する事業モデルのため、自動車・商社業界よりやや低めの水準になりやすい。
- 建設業界: 工事代金の前受金・出来高払いにより運転資本収支が比較的安定しやすい一方、大型M&Aに伴う有利子負債の増減もあり、自動車・商社業界と同水準の30%台後半に収まっている。
- 精密機器業界: 高い利益率を借入にほとんど頼らず内部留保でまかなえるため、実質無借金・自己資本比率90%台という対照的に高い水準になる。
銀行業界と精密機器業界のROE(自己資本利益率、簡易値)は9%台後半とほぼ同水準ですが、その中身(ROAとレバレッジの内訳)はまったく異なります。銀行業界はROA0.4%という低い本業の利益率をレバレッジで大きく底上げしてROEを作っているのに対し、精密機器業界はROA9.1%という高い利益率がほぼそのままROEになっています。同じROEでも「レバレッジで作られた数字か、本業の利益率そのものの数字か」は業界によって大きく異なる、という点が本チャートの一番のポイントです。
代表指標チャート
個人投資家の関心が高い3指標(ROE・自己資本比率・配当利回り)について、業界ごとの代表値を横棒グラフで比較します。上部のトグルで平均値・中央値を切り替えられます。
ROE(自己資本利益率、簡易値)
自己資本比率
配当利回り(会社予想)
指標比較表(全指標)
| 指標 | 自動車業界(5社) | 商社業界(5社) | 銀行業界(5社) | 通信業界(3社) | 小売業界(5社) | 精密機器・FA機器業界(3社) | 不動産業界(5社) | 建設業界(4社) |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 規模 | ||||||||
| 売上高(売上収益・経常収益) | 191,401億円 | 126,675億円 | 77,676億円 | 91,732億円 | 52,486億円 | 9,566億円 | 15,404億円 | 24,501億円 |
| 売上高成長率(前期比) | +1.4% | +0.9% | +7.5% | +5.6% | +3.8% | +8.1% | +10.1% | +2.0% |
| 収益性 | ||||||||
| 営業利益(経常利益) | 8,169億円 | 4,793億円 | 16,158億円 | 12,826億円 | 2,888億円 | 3,234億円 | 2,664億円 | 1,855億円 |
| 営業利益率(経常利益率) | 3.4% | 3.9% | 20.8% | 14.9% | 9.2% | 31.7% | 18.0% | 7.5% |
| 当期純利益 | 6,731億円 | 7,358億円 | 11,670億円 | 7,650億円 | 1,877億円 | 2,597億円 | 1,787億円 | 1,619億円 |
| Return On Equityの略。株主が出した資本(自己資本)に対して、企業がどれだけ効率的に利益を生み出したかを示す指標です。当期純利益÷自己資本で算出します。詳しくはこちら → | 2.0% | 11.3% | 9.9% | 15.0% | 11.4% | 9.9% | 9.2% | 14.2% |
| Return on Assetsの略。負債も含めた総資産全体に対して、企業がどれだけ効率的に利益を生み出したかを示す指標です。当期純利益÷総資産で算出します。詳しくはこちら → | 1.4% | 4.4% | 0.4% | 3.1% | 5.9% | 9.1% | 2.8% | 5.3% |
| EPS(1株当たり利益) | 63.99円 | 217.05円 | 270.97円 | 69.18円 | 352.61円 | 1551.38円 | 148.68円 | 460.36円 |
| 持分法による投資損益 | — | 3,688億円 | — | — | — | — | — | — |
| 投資収益比率(持分法投資損益 ÷ 当期純利益) | — | 50.9% | — | — | — | — | — | — |
| Overhead Ratioの略。経費(人件費・物件費等)を業務粗利益(銀行の本業の粗利益)で割った比率で、銀行がどれだけ効率的に収益を上げているかを示します。数値が低いほど収益効率が良いことを意味します。詳しくはこちら → | — | — | 59.3% | — | — | — | — | — |
| 財務健全性 | ||||||||
| 総資産のうち、返済不要の自己資本(株主資本)がどれだけの割合を占めるかを示す指標。数字が高いほど負債への依存度が低く、財務的な余力が大きいとされます。詳しくはこちら → | 38.2% | 39.2% | 4.4% | 21.1% | 45.7% | 91.8% | 30.6% | 37.7% |
| BPS(1株当たり純資産) | 2449.06円 | 2049.61円 | 2662.96円 | 502.70円 | 2295.46円 | 16603.74円 | 1661.69円 | 3030.88円 |
| 現金及び現金同等物 | 37,774億円 | 9,949億円 | — | 14,798億円 | 5,726億円 | 5,467億円 | 1,276億円 | 3,589億円 |
| 有利子負債 | 13,279億円 | 42,259億円 | — | 95,932億円 | 23,920億円 | 17億円 | 31,291億円 | 5,520億円 |
| ネットキャッシュ | 24,496億円 | -32,310億円 | — | -81,133億円 | -18,194億円 | 5,450億円 | -30,015億円 | -1,931億円 |
| 銀行が保有するリスク・アセット(貸出金等のリスクの大きさに応じて重み付けした資産)に対して、どれだけ質の高い自己資本を持っているかを示す、国際的な銀行規制(バーゼル規制)に基づく指標。銀行の経営健全性を測る中心的な物差しです。詳しくはこちら → | — | — | 11.22% | — | — | — | — | — |
| 市場評価 | ||||||||
| 1株配当(会社予想) | 54円 | 82円 | 93円 | 33円 | 155円 | 552円 | 46円 | 174円 |
| 株価 | 1620.3円 | 3686.1円 | 4371.8円 | 1098.9円 | 17675.7円 | 56543.3円 | 2213.2円 | 5684.8円 |
| Price Earnings Ratioの略。株価が1株あたり利益(EPS)の何倍まで買われているかを示す指標で、株価が利益水準に対して割高か割安かの目安として使われます。詳しくはこちら → | 22.68倍 | 14.48倍 | 14.82倍 | 15.88倍 | 33.22倍 | 34.87倍 | 13.35倍 | 12.43倍 |
| PBR(実績) | 0.66倍 | 1.83倍 | 1.62倍 | 2.51倍 | 5.96倍 | 3.86倍 | 1.25倍 | 1.77倍 |
| 配当利回り(会社予想) | 3.00% | 2.48% | 2.35% | 3.45% | 1.36% | 1.20% | 2.80% | 3.10% |
| 時価総額 | 112,934億円 | 127,886億円 | 196,203億円 | 120,776億円 | 79,433億円 | 106,869億円 | 27,412億円 | 20,446億円 |
| 時価総額を売上高で割った倍率(PSR=Price to Sales Ratioとも呼ばれます)。利益がマイナスでPERが算出できない赤字企業でも、売上高さえあれば算出できる株価指標です。詳しくはこちら → | 0.42倍 | 1.02倍 | 2.56倍 | 1.47倍 | 3.14倍 | 10.30倍 | 1.77倍 | 0.84倍 |
各業界の対象企業・算出基準日は業界ごとに異なります。詳細は各業界ページ(表ヘッダーのリンク)をご覧ください。
業界横断まとめのビジネスモデルと財務構造
業界ごとに財務指標の「普通の水準」は大きく異なります。その違いを生む最大の要因が財務レバレッジ(借入の活用度)です。預金を負債として抱える銀行(自己資本比率4%前後)、物件を借入で取得する不動産(30%前後)、インフラ投資を借入で賄う通信(20%前後)は構造的に自己資本比率が低く、逆に精密機器・FA機器は実質無借金で90%前後に達します。
2つ目の要因は利益率と資産の重さです。売上高に対して大きな資産を必要とする装置産業・不動産はROAが低く、借入でROEを高める構造になりやすい一方、資産が軽く利益率の高い業界はROAとROEがほぼ同じ水準になります。ROE=ROA×財務レバレッジという分解で見ると、同じROE10%でも業界によって中身がまったく違うことが分かります。
3つ目は景気感応度と成長期待です。自動車・FA機器・商社のように景気や資源価格で利益が振れやすい業界と、通信のように安定した継続課金型の業界では、同じ利益水準でも市場がつけるPERが異なります。業界平均と個別企業を比べる際は、こうした業界固有の構造を前提にすることが大切です。
業界横断まとめで注目したい指標の読み方
8業界の比較から読み取れること(運営者の見解)
ROEの中央値は通信・建設・商社が12〜14%台で上位
業界中央値で見たROEは、通信13.8%・建設13.3%・商社12.4%が上位で、自動車は1.8%と最も低くなりました。自動車は2026年3月期にホンダ・日産が最終赤字となったことが大きく影響しており、業界平均が個別企業の特殊要因に引っ張られやすい点には注意が必要です。
自己資本比率は銀行4%台から精密機器90%台まで
自己資本比率の中央値は銀行4.3%・通信20.8%・不動産31.4%に対し、精密機器・FA機器は91.5%と、業界間で20倍以上の開きがあります。この差は経営の良し悪しではなく、各業界のビジネスモデルの違いによるものです。
PERは精密機器・小売が30倍台、自動車・建設は13倍前後
PERの中央値は精密機器32.6倍・小売33.1倍と高く、自動車12.9倍・建設13.3倍・商社14.9倍は低めです。高い利益率と海外成長の期待がある業界ほど高いPERがつく傾向がはっきり表れています。
高配当は通信・自動車・建設、低配当は精密機器・小売
配当利回りの中央値は通信3.5%・自動車3.4%・建設3.1%が上位で、精密機器1.3%・小売1.1%は低めです。PERが低い業界ほど配当利回りが高く出やすく、インカム重視か成長重視かで注目すべき業界が分かれます。
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※上記は掲載データをもとにした運営者の見解であり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。
算出方法・注記
- 各業界の代表値は、その業界ページに掲載している個別企業の実数値から算出した単純平均または中央値です(時価総額加重平均は採用していません)。中央値は外れ値(極端に大きい・小さい企業)の影響を受けにくい一方、対象企業が5社以下(通信業界・精密機器業界は3社)の小さいサンプルでは特定1社の値がそのまま採用されるだけになりやすい点にご注意ください。
- 業界固有の指標(自己資本比率〈バーゼル規制ベース〉・OHR・持分法による投資損益・投資収益比率・ネットキャッシュ関連)は、値を持つ企業がある業界のみで算出しています。該当企業がいない業界は「—」と表示しています。
- 「自己資本比率」は業界・企業によって水準の意味が大きく異なります。銀行業界は預金という負債が巨大なため構造的に低く(規制上の健全性は自己資本比率〈バーゼル規制ベース〉で判断するのが適切)、小売業界のイオンも総合スーパー・ディベロッパー事業を含む複合的な事業構成のため低くなっています。逆に精密機器業界は実質無借金の企業が多く構造的に高くなっています。業界間の単純比較には注意してください(詳細は上記「資本効率マップ」内の解説を参照)。
- 通信業界・精密機器業界は対象企業が3社、建設業界は4社、他5業界は5社です。サンプルサイズが異なる点を踏まえて代表値をご覧ください。
- 各業界の個別企業データ・算出根拠・データソースは、表ヘッダーまたはチャートの業界名リンクから各業界ページでご確認ください。
各業界の詳細ページ
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