建設業界トップ4 財務諸表比較
スーパーゼネコン4社の大成建設・大林組・清水建設・鹿島建設について、2026年3月期通期決算の主要財務指標を横並びで比較します。準大手の長谷工コーポレーション(分譲マンション建設特化)は事業モデルが異なるため対象外とし、通信業界・精密機器業界編と同様に対象社数を4社としています。
バリュエーション・マップ(PER × 売上高倍率)
縦軸はPrice Earnings Ratioの略。株価が1株あたり利益(EPS)の何倍まで買われているかを示す指標で、株価が利益水準に対して割高か割安かの目安として使われます。詳しくはこちら →、横軸は時価総額を売上高で割った倍率(PSR=Price to Sales Ratioとも呼ばれます)。利益がマイナスでPERが算出できない赤字企業でも、売上高さえあれば算出できる株価指標です。詳しくはこちら →で、いずれも対数スケールです。バブルの大きさは時価総額を表します。数値の詳細は下記「指標比較表」または各バブルにカーソルを合わせてご確認ください。
資本効率マップ(ROA × 自己資本比率)
Return On Equityの略。株主が出した資本(自己資本)に対して、企業がどれだけ効率的に利益を生み出したかを示す指標です。当期純利益÷自己資本で算出します。詳しくはこちら →という1つの数字が「本業の稼ぐ力(Return on Assetsの略。負債も含めた総資産全体に対して、企業がどれだけ効率的に利益を生み出したかを示す指標です。当期純利益÷総資産で算出します。詳しくはこちら →)」と「レバレッジ(総資産のうち、返済不要の自己資本(株主資本)がどれだけの割合を占めるかを示す指標。数字が高いほど負債への依存度が低く、財務的な余力が大きいとされます。詳しくはこちら →の低さ)」のどちらでできているかを分解して見るチャートです。4社とも自己資本比率は34.9〜40.0%、ROAは4.8〜6.2%と比較的近い水準に集中していますが、大成建設はROA・ROEともに4社で最も高く、本業の収益性がそのままROEの高さにつながっています。
横軸は自己資本比率、縦軸はROA(簡易値=ROE×自己資本比率で逆算した値)で、いずれも線形スケールです。バブルの大きさは時価総額です。4社の水準が近いため、他業界編より軸の幅を狭く表示しています。
ネットキャッシュ比較チャート
ネットキャッシュ(現金及び現金同等物-有利子負債)は、借入金をすべて返済してもなお現金がどれだけ残るかを表す指標です。大林組のみプラスで、他3社はマイナスとなっています。
ネットキャッシュの大きい順に4社を並べた横棒グラフです。単位は億円。4社とも連結ベースで統一して算出しています。
指標比較表
| 指標 | 大成建設 | 大林組 | 清水建設 | 鹿島建設 |
|---|---|---|---|---|
| 規模 | ||||
| 売上高(売上収益・経常収益) | 20,891億円 | 25,863億円 | 20,578億円 | 30,673億円 |
| 売上高成長率(前期比) | -3.0% | -0.2% | +5.8% | +5.3% |
| 収益性 | ||||
| 営業利益(経常利益) | 1,880億円 | 1,947億円 | 1,187億円 | 2,408億円 |
| 営業利益率(経常利益率) | 9.0% | 7.5% | 5.8% | 7.8% |
| 当期純利益 | 1,700億円 | 1,738億円 | 1,266億円 | 1,773億円 |
| Return On Equityの略。株主が出した資本(自己資本)に対して、企業がどれだけ効率的に利益を生み出したかを示す指標です。当期純利益÷自己資本で算出します。詳しくはこちら → | 17.6% | 13.6% | 13.0% | 12.5% |
| Return on Assetsの略。負債も含めた総資産全体に対して、企業がどれだけ効率的に利益を生み出したかを示す指標です。当期純利益÷総資産で算出します。詳しくはこちら → | 6.2% | 5.5% | 4.8% | 4.9% |
| EPS(1株当たり利益) | 1025.53円 | 249.42円 | 186.68円 | 379.81円 |
| 財務健全性 | ||||
| 総資産のうち、返済不要の自己資本(株主資本)がどれだけの割合を占めるかを示す指標。数字が高いほど負債への依存度が低く、財務的な余力が大きいとされます。詳しくはこちら → | 34.9% | 40.0% | 36.8% | 39.0% |
| BPS(1株当たり純資産) | 5816.09円 | 1830.64円 | 1439.89円 | 3036.89円 |
| 現金及び現金同等物 | 2,730億円 | 4,160億円 | 3,545億円 | 3,923億円 |
| 有利子負債 | 4,635億円 | 3,441億円 | 5,674億円 | 8,331億円 |
| ネットキャッシュ | -1,905億円 | 720億円 | -2,129億円 | -4,409億円 |
| 市場評価 | ||||
| 1株配当(会社予想) | 380円 | 94円 | 77円 | 146円 |
| 株価 | 12470.0円 | 3012.0円 | 2360.0円 | 4897.0円 |
| Price Earnings Ratioの略。株価が1株あたり利益(EPS)の何倍まで買われているかを示す指標で、株価が利益水準に対して割高か割安かの目安として使われます。詳しくはこちら → | 13.46倍 | 13.19倍 | 9.68倍 | 13.38倍 |
| PBR(実績) | 2.18倍 | 1.66倍 | 1.58倍 | 1.65倍 |
| 配当利回り(会社予想) | 3.05% | 3.12% | 3.26% | 2.98% |
| 時価総額 | 20,349億円 | 20,837億円 | 16,914億円 | 23,685億円 |
| 時価総額を売上高で割った倍率(PSR=Price to Sales Ratioとも呼ばれます)。利益がマイナスでPERが算出できない赤字企業でも、売上高さえあれば算出できる株価指標です。詳しくはこちら → | 0.97倍 | 0.81倍 | 0.82倍 | 0.77倍 |
決算数値の算出基準: 2026年5月12日〜5月14日発表の2026年3月期決算短信/株価・PER・PBR・配当利回り・時価総額の基準: 2026年9月11日15:30(東証終値)時点
建設業界のビジネスモデルと財務構造
ゼネコン(総合建設会社)は、発注者から工事を請け負い、協力会社(専門工事会社)を束ねて施工する受注産業です。オフィスビル・工場・再開発などの「建築」と、道路・トンネル・ダムなどの「土木」が2本柱で、土木は官公庁、建築は民間企業の設備投資が主な発注元になります。
損益の特徴は、受注時の採算が数年後の利益を決める点です。大型工事は着工から完成まで数年かかり、その間の資材価格・労務費の上昇を価格に転嫁できないと利益率が大きく下がります。逆に採算の良い工事を選別して受注できた時期の案件が完成期を迎えると、利益率が改善します。
財務面では、工事代金の前受金(未成工事受入金)や工事の進み具合に応じた売上債権が大きく、運転資金が工事の進捗によって大きく増減します。そのため期末時点のネットキャッシュは工事の支払・入金のタイミングで振れやすく、1期だけでなく複数期の推移を確認することが大切です。近年は不動産開発や海外の建設会社買収(M&A)を進める会社も多く、その資金調達が有利子負債の水準差につながっています。
建設業界で注目したい指標の読み方
- 営業利益率
- 工事採算の総合点です。スーパーゼネコンでは5%前後が平均的で、7%を超えると高水準といえます。資材高騰期には赤字工事(工事損失引当金)の計上で一気に下がることがあるため、前期比の変化も併せて確認してください。
- ROE・ROA
- ROEはROA×財務レバレッジ(自己資本比率の逆数)に分解できます。同じROAでも自己資本比率が低い会社ほどROEは高く出るため、ROEの高さが「稼ぐ力」と「借入の活用」のどちらから来ているかを資本効率マップで見分けましょう。
- ネットキャッシュ
- プラスなら手元資金が有利子負債を上回る「実質無借金」です。ゼネコンは工事代金の入出金で期末残高が振れやすいため、マイナスでも直ちに財務リスクとは限りませんが、M&Aや開発投資で構造的に借入が増えているかどうかは見極めが必要です。
4社の比較から読み取れること(運営者の見解)
収益性トップは大成建設、ただしレバレッジも高め
大成建設は営業利益率9.0%・ROE17.6%と4社で最も高い収益性を示しています。一方で自己資本比率は34.9%と4社で最も低く、ROA(6.2%)に対してROEが大きく押し上げられている構図です。PBRも2.18倍と最も高く、市場はこの資本効率を高く評価しています。
ネットキャッシュがプラスなのは大林組のみ
大林組はネットキャッシュ+719.64億円と4社で唯一プラスで、自己資本比率も40.0%と最も高い水準です。対照的に、売上高が3兆円を超え規模で首位の鹿島建設はネットキャッシュ−4,408.6億円と最も大きなマイナスで、海外を含む開発事業への投資の大きさが表れていると考えられます。
清水建設は「増収・低PER・高配当」の組み合わせ
清水建設は売上高が前期比+5.8%と4社で最も伸びた一方、営業利益率は5.8%と4社で最も低く、PERは9.68倍と唯一10倍を下回っています。配当利回りも3.26%で最も高く、利益率の回復を市場がまだ織り込んでいない状態と読めます。詳しくは個別株分析の記事で掘り下げています。
4社とも配当利回り3%前後・PSR1倍未満
配当利回りは2.98%〜3.26%、PSR(売上高倍率)は0.77〜0.97倍と、4社の市場評価は比較的近い水準に収まっています。事業構成が似た業界では、こうした横並びの中でのわずかな差(利益率・財務の差)がPBRの差(1.58〜2.18倍)につながっている点に注目すると、各社の評価の違いが見えてきます。
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- 【日本株分析】清水建設(1803)~スーパーゼネコンで唯一「増収増益予想」と「歴史的な割安水準」が重なる一角 — 清水建設を深掘りした個別株分析
- 貸借対照表(BS)の読み方:資産・負債・純資産と自己資本比率 — 自己資本比率・有利子負債の基礎
- 損益計算書(PL)の読み方:売上高から当期純利益までの利益の構造 — 営業利益率・当期純利益の基礎
※上記は掲載データをもとにした運営者の見解であり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。
会社概要・会計基準
算出方法・データソース
- 対象4社は、東証プライムに上場するスーパーゼネコン(大成建設・大林組・清水建設・鹿島建設)です。準大手の長谷工コーポレーションは分譲マンション建設に特化した事業モデルで、上記4社(国内建築・土木を中核に海外建設・不動産開発事業を展開)とは性質が異なるため対象外としました。竹中工務店は非上場のため対象外です。通信業界編・精密機器業界編と同様、無理に5社に揃えず対象社数を4社としています。
- 各社の決算短信(4社とも2026年3月期)に記載の数値を手動で確認して入力しています。自動取得は行っていません。
- 有利子負債は、4社とも決算短信本文または連結貸借対照表の注記に開示された合計値(短期借入金・1年内返済予定の長期借入金/社債・長期借入金・社債・ノンリコース債務等の合計、リース債務は除く)を採用しています。大成建設・大林組・清水建設は決算短信本文に「有利子負債の残高は◯◯億円」と直接記載があり、鹿島建設は決算短信ハイライト情報に開示されています。
- ROE(自己資本利益率)は、各社が決算短信で個別に公表する値ではなく、EPS(1株当たり当期利益、実績)÷ BPS(1株当たり純資産、期末実績)で4社統一の計算式により算出した簡易値です。
- ROA(総資産利益率)は、資産合計の実額から算出した値ではなく、上記の簡易ROEに自己資本比率を掛けて逆算した簡易値です(ROE=ROA÷自己資本比率という恒等式の逆算)。
- 配当(1株配当・配当利回り)は、4社とも決算短信記載の翌期(2027年3月期)会社予想配当を採用しています。
- M&Aの反映状況: 大成建設は2024年に連結子会社化した東洋建設の業績(2025年10月〜2026年3月分)が当期決算に含まれています。大林組は2025年12月に連結子会社化した米GCON社を含む連結決算です。清水建設は2026年3月30日付で連結子会社化したあおみ建設の貸借対照表のみが当期末に反映されており(みなし取得日が期末直前のため損益計算書には未反映)、清水建設が買収を進めるAmerican Engineering Corporation(Okinawa)は取得時期が2026年5月下旬以降とされ、当期決算には含まれていません。
- 株価・PER・PBR・配当利回り・時価総額は2026年9月11日15:30(東証終値)時点の市場データです。
- ネットキャッシュ(現金及び現金同等物-有利子負債)は、4社とも連結ベースで算出しています。
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