建設業界トップ4 財務諸表比較

スーパーゼネコン4社の大成建設・大林組・清水建設・鹿島建設について、2026年3月期通期決算の主要財務指標を横並びで比較します。準大手の長谷工コーポレーション(分譲マンション建設特化)は事業モデルが異なるため対象外とし、通信業界・精密機器業界編と同様に対象社数を4社としています。

対象決算
2026年5月12日〜5月14日発表の2026年3月期決算短信
出典
各社の決算短信(下記「会社概要・会計基準」に各社IRページへのリンクを掲載)
株価等の基準日
2026年9月11日15:30(東証終値)時点
更新日
データ: /解説:
有利子負債・ネットキャッシュについてのご注意:4社とも有利子負債は決算短信本文または貸借対照表の注記に開示された合計値を採用しています。ネットキャッシュ(現金及び現金同等物-有利子負債)は大林組のみプラス(719.64億円)で、大成建設・清水建設・鹿島建設はマイナスです。東洋建設(大成建設)・GCON社(大林組)・あおみ建設(清水建設)等、各社が近年進めたM&Aに伴う有利子負債の増減が水準差に影響しています。

バリュエーション・マップ(PER × 売上高倍率)

0.6倍0.7倍0.8倍0.9倍1倍1.1倍1.2倍1.3倍8倍9倍10倍11倍12倍13倍14倍15倍16倍 大成建設: PER(会社予想) 13.46倍 / Revenue Multiple(売上高倍率、PSR) 0.97倍 / 時価総額 20,349億円 大成建設 大林組: PER(会社予想) 13.19倍 / Revenue Multiple(売上高倍率、PSR) 0.81倍 / 時価総額 20,837億円 大林組 鹿島建設: PER(会社予想) 13.38倍 / Revenue Multiple(売上高倍率、PSR) 0.77倍 / 時価総額 23,685億円 鹿島建設 清水建設: PER(会社予想) 9.68倍 / Revenue Multiple(売上高倍率、PSR) 0.82倍 / 時価総額 16,914億円 清水建設時価総額を売上高で割った倍率(PSR=Price to Sales Ratioとも呼ばれます)。利益がマイナスでPERが算出できない赤字企業でも、売上高さえあれば算出できる株価指標です。詳しくはこちら →Price Earnings Ratioの略。株価が1株あたり利益(EPS)の何倍まで買われているかを示す指標で、株価が利益水準に対して割高か割安かの目安として使われます。詳しくはこちら →
大成建設大林組清水建設鹿島建設

縦軸はPrice Earnings Ratioの略。株価が1株あたり利益(EPS)の何倍まで買われているかを示す指標で、株価が利益水準に対して割高か割安かの目安として使われます。詳しくはこちら →、横軸は時価総額を売上高で割った倍率(PSR=Price to Sales Ratioとも呼ばれます)。利益がマイナスでPERが算出できない赤字企業でも、売上高さえあれば算出できる株価指標です。詳しくはこちら →で、いずれも対数スケールです。バブルの大きさは時価総額を表します。数値の詳細は下記「指標比較表」または各バブルにカーソルを合わせてご確認ください。

資本効率マップ(ROA × 自己資本比率)

Return On Equityの略。株主が出した資本(自己資本)に対して、企業がどれだけ効率的に利益を生み出したかを示す指標です。当期純利益÷自己資本で算出します。詳しくはこちら →という1つの数字が「本業の稼ぐ力(Return on Assetsの略。負債も含めた総資産全体に対して、企業がどれだけ効率的に利益を生み出したかを示す指標です。当期純利益÷総資産で算出します。詳しくはこちら →)」と「レバレッジ(総資産のうち、返済不要の自己資本(株主資本)がどれだけの割合を占めるかを示す指標。数字が高いほど負債への依存度が低く、財務的な余力が大きいとされます。詳しくはこちら →の低さ)」のどちらでできているかを分解して見るチャートです。4社とも自己資本比率は34.9〜40.0%、ROAは4.8〜6.2%と比較的近い水準に集中していますが、大成建設はROA・ROEともに4社で最も高く、本業の収益性がそのままROEの高さにつながっています。

ROE 12%ROE 14%ROE 16%ROE 18%34%36%38%40%42%4.5%5.0%5.5%6.0%6.5% 大成建設: ROA(総資産利益率、簡易値) 6.2% / 自己資本比率 34.9% / ROE(自己資本利益率、簡易値) 17.6% 大成建設 大林組: ROA(総資産利益率、簡易値) 5.5% / 自己資本比率 40.0% / ROE(自己資本利益率、簡易値) 13.6% 大林組 清水建設: ROA(総資産利益率、簡易値) 4.8% / 自己資本比率 36.8% / ROE(自己資本利益率、簡易値) 13.0% 清水建設 鹿島建設: ROA(総資産利益率、簡易値) 4.9% / 自己資本比率 39.0% / ROE(自己資本利益率、簡易値) 12.5% 鹿島建設総資産のうち、返済不要の自己資本(株主資本)がどれだけの割合を占めるかを示す指標。数字が高いほど負債への依存度が低く、財務的な余力が大きいとされます。詳しくはこちら →Return on Assetsの略。負債も含めた総資産全体に対して、企業がどれだけ効率的に利益を生み出したかを示す指標です。当期純利益÷総資産で算出します。詳しくはこちら →
大成建設大林組清水建設鹿島建設

横軸は自己資本比率、縦軸はROA(簡易値=ROE×自己資本比率で逆算した値)で、いずれも線形スケールです。バブルの大きさは時価総額です。4社の水準が近いため、他業界編より軸の幅を狭く表示しています。

ネットキャッシュ比較チャート

ネットキャッシュ(現金及び現金同等物-有利子負債)は、借入金をすべて返済してもなお現金がどれだけ残るかを表す指標です。大林組のみプラスで、他3社はマイナスとなっています。

-4,000億円-2,000億円0億円大林組: ネットキャッシュ 720億円大林組720億円大成建設: ネットキャッシュ -1,905億円大成建設-1,905億円清水建設: ネットキャッシュ -2,129億円清水建設-2,129億円鹿島建設: ネットキャッシュ -4,409億円鹿島建設-4,409億円

ネットキャッシュの大きい順に4社を並べた横棒グラフです。単位は億円。4社とも連結ベースで統一して算出しています。

指標比較表

指標大成建設大林組清水建設鹿島建設
規模
売上高(売上収益・経常収益)20,891億円25,863億円20,578億円30,673億円
売上高成長率(前期比)-3.0%-0.2%+5.8%+5.3%
収益性
営業利益(経常利益)1,880億円1,947億円1,187億円2,408億円
営業利益率(経常利益率)9.0%7.5%5.8%7.8%
当期純利益1,700億円1,738億円1,266億円1,773億円
Return On Equityの略。株主が出した資本(自己資本)に対して、企業がどれだけ効率的に利益を生み出したかを示す指標です。当期純利益÷自己資本で算出します。詳しくはこちら →17.6%13.6%13.0%12.5%
Return on Assetsの略。負債も含めた総資産全体に対して、企業がどれだけ効率的に利益を生み出したかを示す指標です。当期純利益÷総資産で算出します。詳しくはこちら →6.2%5.5%4.8%4.9%
EPS(1株当たり利益)1025.53円249.42円186.68円379.81円
財務健全性
総資産のうち、返済不要の自己資本(株主資本)がどれだけの割合を占めるかを示す指標。数字が高いほど負債への依存度が低く、財務的な余力が大きいとされます。詳しくはこちら →34.9%40.0%36.8%39.0%
BPS(1株当たり純資産)5816.09円1830.64円1439.89円3036.89円
現金及び現金同等物2,730億円4,160億円3,545億円3,923億円
有利子負債4,635億円3,441億円5,674億円8,331億円
ネットキャッシュ-1,905億円720億円-2,129億円-4,409億円
市場評価
1株配当(会社予想)380円94円77円146円
株価12470.0円3012.0円2360.0円4897.0円
Price Earnings Ratioの略。株価が1株あたり利益(EPS)の何倍まで買われているかを示す指標で、株価が利益水準に対して割高か割安かの目安として使われます。詳しくはこちら →13.46倍13.19倍9.68倍13.38倍
PBR(実績)2.18倍1.66倍1.58倍1.65倍
配当利回り(会社予想)3.05%3.12%3.26%2.98%
時価総額20,349億円20,837億円16,914億円23,685億円
時価総額を売上高で割った倍率(PSR=Price to Sales Ratioとも呼ばれます)。利益がマイナスでPERが算出できない赤字企業でも、売上高さえあれば算出できる株価指標です。詳しくはこちら →0.97倍0.81倍0.82倍0.77倍

決算数値の算出基準: 2026年5月12日〜5月14日発表の2026年3月期決算短信/株価・PER・PBR・配当利回り・時価総額の基準: 2026年9月11日15:30(東証終値)時点

建設業界のビジネスモデルと財務構造

ゼネコン(総合建設会社)は、発注者から工事を請け負い、協力会社(専門工事会社)を束ねて施工する受注産業です。オフィスビル・工場・再開発などの「建築」と、道路・トンネル・ダムなどの「土木」が2本柱で、土木は官公庁、建築は民間企業の設備投資が主な発注元になります。

損益の特徴は、受注時の採算が数年後の利益を決める点です。大型工事は着工から完成まで数年かかり、その間の資材価格・労務費の上昇を価格に転嫁できないと利益率が大きく下がります。逆に採算の良い工事を選別して受注できた時期の案件が完成期を迎えると、利益率が改善します。

財務面では、工事代金の前受金(未成工事受入金)や工事の進み具合に応じた売上債権が大きく、運転資金が工事の進捗によって大きく増減します。そのため期末時点のネットキャッシュは工事の支払・入金のタイミングで振れやすく、1期だけでなく複数期の推移を確認することが大切です。近年は不動産開発や海外の建設会社買収(M&A)を進める会社も多く、その資金調達が有利子負債の水準差につながっています。

建設業界で注目したい指標の読み方

営業利益率
工事採算の総合点です。スーパーゼネコンでは5%前後が平均的で、7%を超えると高水準といえます。資材高騰期には赤字工事(工事損失引当金)の計上で一気に下がることがあるため、前期比の変化も併せて確認してください。
ROE・ROA
ROEはROA×財務レバレッジ(自己資本比率の逆数)に分解できます。同じROAでも自己資本比率が低い会社ほどROEは高く出るため、ROEの高さが「稼ぐ力」と「借入の活用」のどちらから来ているかを資本効率マップで見分けましょう。
ネットキャッシュ
プラスなら手元資金が有利子負債を上回る「実質無借金」です。ゼネコンは工事代金の入出金で期末残高が振れやすいため、マイナスでも直ちに財務リスクとは限りませんが、M&Aや開発投資で構造的に借入が増えているかどうかは見極めが必要です。

4社の比較から読み取れること(運営者の見解)

  1. 収益性トップは大成建設、ただしレバレッジも高め

    大成建設は営業利益率9.0%・ROE17.6%と4社で最も高い収益性を示しています。一方で自己資本比率は34.9%と4社で最も低く、ROA(6.2%)に対してROEが大きく押し上げられている構図です。PBRも2.18倍と最も高く、市場はこの資本効率を高く評価しています。

  2. ネットキャッシュがプラスなのは大林組のみ

    大林組はネットキャッシュ+719.64億円と4社で唯一プラスで、自己資本比率も40.0%と最も高い水準です。対照的に、売上高が3兆円を超え規模で首位の鹿島建設はネットキャッシュ−4,408.6億円と最も大きなマイナスで、海外を含む開発事業への投資の大きさが表れていると考えられます。

  3. 清水建設は「増収・低PER・高配当」の組み合わせ

    清水建設は売上高が前期比+5.8%と4社で最も伸びた一方、営業利益率は5.8%と4社で最も低く、PERは9.68倍と唯一10倍を下回っています。配当利回りも3.26%で最も高く、利益率の回復を市場がまだ織り込んでいない状態と読めます。詳しくは個別株分析の記事で掘り下げています。

  4. 4社とも配当利回り3%前後・PSR1倍未満

    配当利回りは2.98%〜3.26%、PSR(売上高倍率)は0.77〜0.97倍と、4社の市場評価は比較的近い水準に収まっています。事業構成が似た業界では、こうした横並びの中でのわずかな差(利益率・財務の差)がPBRの差(1.58〜2.18倍)につながっている点に注目すると、各社の評価の違いが見えてきます。

※上記は掲載データをもとにした運営者の見解であり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。

会社概要・会計基準

大成建設(1801)

日本基準

2026年3月期(通期、2025年4月1日〜2026年3月31日)

大成建設 2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結) →

大林組(1802)

日本基準

2026年3月期(通期、2025年4月1日〜2026年3月31日)

大林組 2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結) →

清水建設(1803)

日本基準

2026年3月期(通期、2025年4月1日〜2026年3月31日)

清水建設 2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結) →

鹿島建設(1812)

日本基準

2026年3月期(通期、2025年4月1日〜2026年3月31日)

鹿島建設 2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結) →

算出方法・データソース

※本ツールは各社の決算短信に基づく財務指標を業界内で相対比較する情報提供を目的としており、投資助言・売買推奨ではありません。特定の企業への投資を推奨するものではなく、投資判断はご自身の責任で行ってください。数値は算出時点のものであり、最新の情報は各社のIR資料でご確認ください。