【業界比較】3メガバンク・三井住友トラスト・りそな、銀行トップ5の2026年3月期決算を財務指標で比較する

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「銀行株は自己資本比率が低いから危ない」と聞いたことがある方もいるかもしれませんが、これは半分正しく半分誤解です。銀行の自己資本比率は業態上、他業界と比べて低く出るのが構造的に当たり前であり、本当に見るべきなのは規制上の別の指標だからです。

この記事は、Quant Nestの「業界比較」シリーズ第3弾です。自動車業界編商社業界編に続き、今回は3メガバンク(三菱UFJフィナンシャル・グループ・三井住友フィナンシャルグループ・みずほフィナンシャルグループ)に三井住友トラストグループ・りそなホールディングスを加えた銀行トップ5を取り上げます。詳しい数値は銀行業界トップ5 財務諸表比較ツールで確認できます。

比較の前提:5社とも2026年3月期・会計基準は日本基準で統一

5社はいずれも決算期が3月末で揃っており、会計基準もすべて日本基準で統一されているため、自動車業界編にあった会計基準の違いによる注意書きは不要です。ただし銀行業界には、自動車・商社業界とは異なる注意点があります。銀行には「売上高」「営業利益」に相当する科目が存在しないため、本記事・ツールでは「経常収益」「経常利益」をそれぞれの代わりに用いています。

規模:三菱UFJが経常収益14.6兆円でトップ、りそなは前期比+21.5%の増収

三菱UFJ 三井住友 みずほ 三井住友トラスト りそな
経常収益 14兆6,208億円 10兆7,909億円 9兆854億円 2兆9,835億円 1兆3,572億円
前期比 +7.3% +6.1% +0.6% +2.1% +21.5%

経常収益でトップは三菱UFJフィナンシャル・グループの14兆6,208億円で、2位の三井住友フィナンシャルグループ(10兆7,909億円)に3.8兆円以上の差をつけています。増収率ではりそなホールディングスが+21.5%と5社で突出しており、資金利益の伸び(前期比+23%)が主因です。三井住友トラストグループ・りそなホールディングスは2メガバンクに次ぐ規模ながら、経常収益の絶対額では3メガバンクの数分の1にとどまります。

収益性:当期純利益は三菱UFJが2兆円超でトップ、ROEは3メガバンクが優位

三菱UFJ 三井住友 みずほ 三井住友トラスト りそな
当期純利益 2兆4,272億円 1兆5,830億円 1兆2,486億円 3,176億円 2,587億円
ROE(簡易値) 10.80% 9.96% 10.84% 8.85% 8.83%
ROA(簡易値) 0.56% 0.48% 0.40% 0.38% 0.34%

当期純利益は三菱UFJフィナンシャル・グループの2兆4,272億円がトップで、規模に比例した結果になっています。一方、ROE(簡易値)で見るとみずほフィナンシャルグループ(10.84%)が僅差で三菱UFJ(10.80%)を上回り、必ずしも規模の大きさとROEの高さが一致しないことが分かります。三井住友トラストグループ・りそなホールディングスのROEは8%台と、3メガバンクよりやや低めです。ROAはいずれの銀行も1%を大きく下回る水準(0.34%〜0.56%)ですが、これは銀行が預金という資金を元手に巨額の総資産を抱えるビジネスモデル上、一般事業会社よりROA水準が低く出るのが正常であるためで、収益性が劣っていることを意味しません。

財務健全性:「自己資本比率」という同じ言葉が指す中身が業界内でも2種類ある

銀行業界を比較する上で最も重要な注意点がここにあります。

三菱UFJ 三井住友 みずほ 三井住友トラスト りそな
自己資本比率(単純比率) 5.2% 4.8% 3.7% 4.3% 3.8%
自己資本比率(バーゼル規制ベース) 11.29% 11.50% 9.9% 10.89% 12.54%

指標比較表に載せている「自己資本比率」(純資産÷総資産の単純比率)だけを見ると、5社とも3%台〜5%台と、自動車業界(30〜50%程度)と比べて極端に低く見えます。しかし、これは銀行が預金という顧客からの預かり金を元手に貸出を行うビジネスモデル上、総資産が自己資本に比べて巨大になるために生じる構造的な現象であり、経営が不健全であることを意味しません

銀行の経営健全性を判断するには、リスク・アセット(貸出金等をリスクの大きさで重み付けした額)を分母にした「自己資本比率(バーゼル規制ベース)」を見るのが適切です。この指標で見ると、りそなホールディングスが12.54%で最も高く、みずほフィナンシャルグループが9.9%で最も低いという、単純比率とは違う順位が見えてきます。なお、りそなホールディングス(国内基準)と他4社(国際統一基準)は算出根拠自体が異なるため、単純な大小比較には注意が必要です。詳しくは自己資本比率(バーゼル規制ベース)の解説をご覧ください。

また、銀行の負債はほぼすべて預金という「有利子負債」に該当するため、自動車・商社業界編で使ったネットキャッシュという指標は銀行には適用できません(計算すると全社が大幅なマイナスになるだけです)。本ツールでは銀行業界向けの代替指標として、次に紹介するOHR(経費率)を新たに採用しています。

収益効率性:OHRは三井住友フィナンシャルグループが最も効率的

三菱UFJ 三井住友 みずほ 三井住友トラスト りそな
OHR(経費率) 60.02% 54.73% 60.49% 63.82% 57.58%

OHR(Overhead Ratio、経費率)は、経費を業務粗利益で割った比率で、数値が低いほど収益効率が良いことを示します。5社の中では三井住友フィナンシャルグループが54.73%と最も効率的で、三井住友トラストグループが63.82%と最も高く(非効率)なっています。信託銀行業を主力とする三井住友トラストグループは、メガバンクとは収益構造・費用構造が異なるため、この差が業態の違いを反映している可能性がある点は留意が必要です。

市場評価:PERは三井住友トラストが最も割安、配当利回りは同社が最高

三菱UFJ 三井住友 みずほ 三井住友トラスト りそな
PER 16.54倍 15.30倍 14.22倍 12.10倍 15.93倍
PBR(実績) 1.79倍 1.61倍 1.68倍 1.31倍 1.69倍
配当利回り(会社予想) 2.69% 2.64% 1.84% 2.87% 1.69%

PERが最も低い(割安)のは三井住友トラストグループの12.10倍で、PBRも1.31倍と5社で最も低くなっています。一方、配当利回りは同社が2.87%と5社で最も高く、割安感と高い株主還元の両方が意識されている可能性があります。なお、三菱UFJフィナンシャル・グループのみ会社が正式な「業績予想」ではなく「利益目標」を採用しており、他4社とは異なり実績PER(株価÷実績EPS)を使っている点にご注意ください。

銀行業界の「目安値」について、現時点で言えること・言えないこと

自動車業界編・商社業界編に続き、今回も銀行業界1業界・5社・1時点のデータにすぎないため、「銀行のROEは何%が標準」と断定することはできません。ただし、製造業(自動車)・投資業(商社)・金融業(銀行)という3種の異なる収益構造を比較できたことで、次の2点が見えてきました。

  • 銀行業界では「自己資本比率」という同じ言葉が、単純な会計比率(3%台〜5%台)と規制上の資本健全性指標(バーゼル規制ベース、10%前後)というまったく異なる2つの意味を持ちうる。同じ言葉でも業界・文脈によって指す中身が違うことを踏まえて数字を読む必要がある
  • 自動車業界のネットキャッシュは金融子会社という「例外的な歪み」、商社業界のネットキャッシュのマイナスは「業界としての通常パターン」でしたが、銀行業界はそもそもネットキャッシュという指標の枠組み自体が適用できない業態であり、業界ごとに「使える指標」がここまで変わりうることが具体的に確認できた

自動車業界(製造業)・商社業界(投資・トレーディング業)・銀行業界(金融業)という3つの異なる収益構造のデータが揃ったことで、業界特性に応じて指標の読み方を変える必要性がより具体的に見えてきました。

まとめ

  • 経常収益トップは三菱UFJフィナンシャル・グループ(14兆6,208億円)。増収率トップはりそなホールディングス(+21.5%)
  • 当期純利益トップは三菱UFJ(2兆4,272億円)だが、ROE(簡易値)はみずほフィナンシャルグループ(10.84%)が僅差で最高
  • 自己資本比率は「単純比率(3%台〜5%台)」と「バーゼル規制ベース(10%前後)」でまったく異なる水準になる。銀行の経営健全性は後者で判断するのが適切
  • バーゼル規制ベースの自己資本比率はりそなホールディングスが12.54%で最高、みずほフィナンシャルグループが9.9%で最低
  • OHR(経費率)は三井住友フィナンシャルグループが54.73%で最も効率的
  • PER・PBRとも三井住友トラストグループが5社で最も低く、配当利回りは同社が最高(2.87%)
  • 詳しい数値・グラフ(PER×売上高倍率のバリュエーション・マップ、ROA×自己資本比率の資本効率マップ、資本健全性チャート、OHR比較チャート)は銀行業界トップ5 財務諸表比較ツールで確認できます

本記事で紹介した数値は各社の決算短信(2026年5月12日〜5月15日発表)およびバーゼルIII関連データ、2026年7月30日〜31日時点の株価データに基づく、執筆時点の情報です。本記事・関連ツールは業界内での財務指標の相対比較を目的とした情報提供であり、投資助言・売買推奨ではありません。最新の情報は各社のIR資料でご確認の上、投資判断はご自身の責任で行ってください。