更新日: 2026年10月5日
OHR(経費率)とは
Overhead Ratioの略。経費(人件費・物件費等)を業務粗利益(銀行の本業の粗利益)で割った比率で、銀行がどれだけ効率的に収益を上げているかを示します。数値が低いほど収益効率が良いことを意味します。
かみ砕いた説明
OHR(Overhead Ratio、オーバーヘッドレシオ、経費率)は、銀行の収益効率性を示す代表的な指標です。銀行が本業で稼いだ粗利益のうち、どれだけを人件費・システム費・店舗の維持費といった経費に使ってしまったかを表します。
一般事業会社であれば「売上高に対して販管費がどれだけかかったか(売上高販管費比率)」や営業利益率で効率性を見ますが、銀行には「売上高」「営業利益」という科目がありません。そこで、預金と貸出の金利差(資金利益)や手数料収入などを合計した業務粗利益を「売上総利益」に相当するものとみなし、それに対する経費の割合で効率性を測るのがOHRです。
OHRは低いほど効率的です。OHR60%の銀行は、粗利益100円を稼ぐのに60円の経費がかかり、手元に残るのは40円(貸倒れ費用や税金を差し引く前)ということになります。OHR50%の銀行なら50円が残ります。同じ粗利益を稼いでも、OHRが10ポイント違えば本業の利益は2割以上変わる計算です。
計算式
OHR = 経費 ÷ 業務粗利益
- 経費: 人件費・物件費(店舗・システム関連費用など)・税金(法人税等を除く)の合計。会社によって「営業費」「営業経費」「総経費」などラベルが異なります
- 業務粗利益: 資金利益(貸出金利息-預金利息など)+役務取引等利益(手数料収入)+特定取引利益+その他業務利益。グループ連結では「連結業務粗利益」「連結粗利益」などと呼ばれます
計算例:3メガバンク・りそな・三井住友トラストの実際の数値
当サイトの銀行業界トップ5 財務諸表比較ツールでは、各社が2026年3月期の決算短信で開示した経費・業務粗利益の実額からOHRを算出しています。
| 会社 | 経費 | 業務粗利益 | OHR |
|---|---|---|---|
| 三井住友フィナンシャルグループ | 26,515億円 | 48,447億円 | 54.7% |
| りそなホールディングス | 4,657億円 | 8,088億円 | 57.6% |
| 三菱UFJフィナンシャル・グループ | 35,672億円 | 59,444億円 | 60.0% |
| みずほフィナンシャルグループ | 21,034億円 | 34,772億円 | 60.5% |
| 三井住友トラストグループ | 6,127億円 | 9,602億円 | 63.8% |
たとえば三井住友フィナンシャルグループは「26,515億円 ÷ 48,447億円 ≒ 54.7%」で、5社の中で最も効率的という結果になります。一方、規模で最大の三菱UFJフィナンシャル・グループは60.0%で、粗利益の額が最も大きいからといってOHRまで最も低いわけではないことが分かります。りそなホールディングスは粗利益の規模がメガバンクの数分の1でも57.6%と2番目に低く、規模の大小と効率性は別の話であることを示す例になっています。
信託銀行を中核とする三井住友トラストグループのOHRが最も高いのは、資産運用・資産管理など人手やシステムへの投資が必要な手数料ビジネスの比重が大きいという、ビジネスモデルの違いを反映していると考えられます。OHRの高低は「経営が上手か下手か」だけでなく、どんな業務で稼いでいる銀行かも映し出します。
OHRとROEの関係
OHRが低いほど、同じ粗利益から多くの利益が残るため、一般的にはROE(自己資本利益率)の押し上げ要因になります。ただし、上記5社のROE(簡易値)は三菱UFJ 10.8%・みずほ10.8%・三井住友10.0%・三井住友トラスト8.9%・りそな8.8%で、OHRが最も低い三井住友のROEが最も高いわけではありません。ROEには貸倒れ費用、有価証券の売却損益、税金、そして自己資本比率の水準など、OHR以外の要素も大きく影響するためです。OHRは「本業の経費効率」という一断面を切り取った指標として、ROEやROAと組み合わせて読むのが基本です。
よくある誤解・注意点
- 「OHRが低い=良い銀行」とは限らない: 将来の競争力のためにシステム投資や人材投資を積極的に行っている時期は、一時的にOHRが上がります。逆に、必要な投資を先送りしてOHRを下げているケースもあり得ます。単年度の水準より、複数年の推移と経費の中身をあわせて見ることが大切です
- 会社ごとに分子・分母の定義が完全には一致しない: OHRは法令で算出方法が統一された指標ではなく、各行が決算資料で自主的に開示する参考値です。上表でも「営業費÷連結業務粗利益(信託勘定償却前)」「総経費÷実質業務粗利益」など、各社で科目名が異なります。数ポイントの差を厳密な優劣として扱うのではなく、大まかな効率性の目安として比較するのが適切です
- 一般事業会社の「経費率」とは別物: 家計や一般企業の文脈で使う「経費率」とは計算の分母が異なります。銀行のOHRは業務粗利益という銀行独自の利益概念を分母に使う点に注意してください
銀行の財務分析では、OHR(効率性)とあわせて自己資本比率(バーゼル規制ベース)(健全性)を確認するのが定番の組み合わせです。各社のOHR比較チャートは銀行業界トップ5 財務諸表比較ツールで、背景の解説は3メガバンクの決算比較記事で確認できます。