小売業界トップ5 財務諸表比較
ファーストリテイリング・セブン&アイ・ホールディングス・イオン・ニトリホールディングス・良品計画について、各社直近の本決算の主要財務指標を横並びで比較します。他業界編と異なり5社の決算期がバラバラ(8月期・2月期・3月期)なため、同一時点の比較ではない点にご注意ください。
バリュエーション・マップ(PER × 売上高倍率)
縦軸はPrice Earnings Ratioの略。株価が1株あたり利益(EPS)の何倍まで買われているかを示す指標で、株価が利益水準に対して割高か割安かの目安として使われます。詳しくはこちら →、横軸は時価総額を売上高で割った倍率(PSR=Price to Sales Ratioとも呼ばれます)。利益がマイナスでPERが算出できない赤字企業でも、売上高さえあれば算出できる株価指標です。詳しくはこちら →で、いずれも対数スケールです。バブルの大きさは時価総額を表します。5社の事業モデル・規模の差が大きいため、他業界編よりも軸の幅が広くなっています。数値の詳細は下記「指標比較表」または各バブルにカーソルを合わせてご確認ください。
資本効率マップ(ROA × 自己資本比率)
Return On Equityの略。株主が出した資本(自己資本)に対して、企業がどれだけ効率的に利益を生み出したかを示す指標です。当期純利益÷自己資本で算出します。詳しくはこちら →という1つの数字が「本業の稼ぐ力(Return on Assetsの略。負債も含めた総資産全体に対して、企業がどれだけ効率的に利益を生み出したかを示す指標です。当期純利益÷総資産で算出します。詳しくはこちら →)」と「レバレッジ(総資産のうち、返済不要の自己資本(株主資本)がどれだけの割合を占めるかを示す指標。数字が高いほど負債への依存度が低く、財務的な余力が大きいとされます。詳しくはこちら →の低さ)」のどちらでできているかを分解して見るチャートです。斜めの参照線はROE一定線(ROE=ROA÷自己資本比率という恒等式に基づく)で、同じ線の上に乗っている会社は数式上ROEが同じであることを意味します。イオンは総合スーパー・ディベロッパー事業を含む複合的な事業構成のため、自己資本比率が他4社より一桁低い水準になる点にご注意ください。
横軸は自己資本比率、縦軸はROA(簡易値=ROE×自己資本比率で逆算した値)で、いずれも線形スケールです。バブルの大きさは時価総額です。
ネットキャッシュ比較チャート
ネットキャッシュ(現金及び現金同等物-有利子負債)は、借入金をすべて返済してもなお現金がどれだけ残るかを表す指標です。5社とも店舗網・物流網への投資負担から有利子負債が現金同等物を上回っており、ネットキャッシュはいずれもマイナスになります。
ネットキャッシュの大きい順(マイナス幅が小さい順)に5社を並べた横棒グラフです。単位は兆円(軸目盛り)、バー上のラベルは億円単位の実数です。5社とも連結ベースで統一して算出しています。
指標比較表
| 指標 | ファーストリテイリング | セブン&アイ・ホールディングス | イオン | ニトリホールディングス | 良品計画 |
|---|---|---|---|---|---|
| 規模 | |||||
| 売上高(売上収益・経常収益) | 34,005億円 | 104,303億円 | 107,153億円 | 9,122億円 | 7,846億円 |
| 売上高成長率(前期比) | +9.6% | -12.9% | +5.7% | -1.8% | +18.6% |
| 収益性 | |||||
| 営業利益(経常利益) | 5,511億円 | 4,230億円 | 2,705億円 | 1,255億円 | 738億円 |
| 営業利益率(経常利益率) | 16.2% | 4.1% | 2.5% | 13.8% | 9.4% |
| 当期純利益 | 4,330億円 | 2,928億円 | 727億円 | 893億円 | 508億円 |
| Return On Equityの略。株主が出した資本(自己資本)に対して、企業がどれだけ効率的に利益を生み出したかを示す指標です。当期純利益÷自己資本で算出します。詳しくはこちら → | 19.1% | 7.6% | 6.1% | 9.0% | 15.3% |
| Return on Assetsの略。負債も含めた総資産全体に対して、企業がどれだけ効率的に利益を生み出したかを示す指標です。当期純利益÷総資産で算出します。詳しくはこちら → | 11.2% | 3.0% | 0.5% | 5.7% | 9.0% |
| EPS(1株当たり利益) | 1411.44円 | 118.81円 | 26.87円 | 157.98円 | 47.96円 |
| 財務健全性 | |||||
| 総資産のうち、返済不要の自己資本(株主資本)がどれだけの割合を占めるかを示す指標。数字が高いほど負債への依存度が低く、財務的な余力が大きいとされます。詳しくはこちら → | 58.9% | 39.6% | 7.9% | 62.9% | 59.0% |
| BPS(1株当たり純資産) | 7408.65円 | 1566.06円 | 440.40円 | 1749.49円 | 312.69円 |
| 現金及び現金同等物 | 8,932億円 | 4,261億円 | 12,631億円 | 1,450億円 | 1,354億円 |
| 有利子負債 | 51,350億円 | 22,300億円 | 39,675億円 | 1,600億円 | 4,674億円 |
| ネットキャッシュ | -42,418億円 | -18,039億円 | -27,044億円 | -150億円 | -3,320億円 |
| 市場評価 | |||||
| 1株配当(会社予想) | 640円 | 60円 | 15円 | 32円 | 28円 |
| 株価 | 78190.0円 | 2109.0円 | 1364.0円 | 2538.5円 | 4177.0円 |
| Price Earnings Ratioの略。株価が1株あたり利益(EPS)の何倍まで買われているかを示す指標で、株価が利益水準に対して割高か割安かの目安として使われます。詳しくはこちら → | 47.98倍 | 17.54倍 | 51.71倍 | 15.76倍 | 33.09倍 |
| PBR(実績) | 10.55倍 | 1.35倍 | 3.10倍 | 1.45倍 | 13.36倍 |
| 配当利回り(会社予想) | 0.82% | 2.84% | 1.10% | 1.26% | 0.77% |
| 時価総額 | 248,817億円 | 48,934億円 | 37,967億円 | 14,526億円 | 46,919億円 |
| 時価総額を売上高で割った倍率(PSR=Price to Sales Ratioとも呼ばれます)。利益がマイナスでPERが算出できない赤字企業でも、売上高さえあれば算出できる株価指標です。詳しくはこちら → | 7.32倍 | 0.47倍 | 0.35倍 | 1.59倍 | 5.98倍 |
決算数値の算出基準: 各社の直近本決算(ファーストリテイリング・良品計画は2025年8月期、セブン&アイ・イオンは2026年2月期、ニトリホールディングスは2026年3月期)/株価・PER・PBR・配当利回り・時価総額の基準: 2026年7月31日(東証終値)、時価総額・発行済株式数は同日時点
小売業界のビジネスモデルと財務構造
一口に小売といっても、ビジネスモデルは大きく2つに分かれます。ファーストリテイリング(ユニクロ)・ニトリ・良品計画(無印良品)は、商品の企画・製造から販売までを自社で一貫して手がけるSPA(製造小売)型で、中間マージンを取り込めるため利益率が高く出ます。一方、セブン&アイ(コンビニ)・イオン(総合スーパー)は他社が製造した多様な商品を仕入れて売る流通型で、売上規模は大きいものの利益率は低めです。
財務構造も業態によって異なります。コンビニはフランチャイズ加盟店から受け取るロイヤルティが収益の柱で、自社で店舗を運営する直営型と比べて資産が軽くなります。イオンは総合スーパーに加えて銀行・クレジットカードなどの金融事業やショッピングモール開発を連結に抱えるため、預金を負債として計上する金融事業の影響で自己資本比率が大きく下がります。
小売業は店舗を賃借することが多く、IFRSを採用するファーストリテイリング・ニトリでは店舗の賃借契約がリース負債として貸借対照表に計上されます。日本基準の会社(セブン&アイ・イオン・良品計画)とは総資産や負債の計上範囲が異なるため、自己資本比率やネットキャッシュを比べる際は会計基準の違いにも注意してください。
小売業界で注目したい指標の読み方
5社の比較から読み取れること(運営者の見解)
SPA型3社が利益率・ROEで流通型を上回る
営業利益率はファーストリテイリング16.2%・ニトリ13.8%・良品計画9.4%に対し、セブン&アイ4.1%・イオン2.5%と、SPA型と流通型の差がはっきり表れています。ROEもファーストリテイリング19.1%・良品計画15.3%が上位で、ビジネスモデルの違いが資本効率の違いに直結しています。
成長期待の差がPBRの大差につながっている
PBRは良品計画13.36倍・ファーストリテイリング10.55倍と、他3社(1.35〜3.1倍)を大きく上回ります。良品計画は売上高が前期比+18.6%と5社で最も伸びており、海外を含む出店拡大への期待が株価に反映されていると読めます。
イオンのPER51.71倍は低い純利益率の裏返し
イオンは売上高10.7兆円と5社最大ながら、当期純利益は727億円にとどまり、PERは51.71倍と高く出ています。成長期待で高く評価されているSPA型のPERとは意味が異なり、利益水準の低さによって見かけ上PERが高くなっている点を区別して読む必要があります。
セブン&アイは売上高が前期比12.9%減
セブン&アイは売上高が前期比−12.9%と大きく減少しました。小売業の売上高は事業の売却・連結範囲の変更でも大きく変わるため、減収の数字だけでなく、各社の決算説明資料で継続事業ベースの動きを確認することをおすすめします。
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※上記は掲載データをもとにした運営者の見解であり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。
会社概要・会計基準
※5社のうち2種類の会計基準が混在しています。同じ「営業利益」という名称でも基準間で算出方法が異なる場合があるため、単純な数値の大小比較だけでなく、各社の決算短信の注記も合わせてご確認ください。
算出方法・データソース
- 各社の決算短信(ファーストリテイリング・良品計画は2025年8月期、セブン&アイ・イオンは2026年2月期、ニトリホールディングスは2026年3月期)に記載の数値を手動で確認して入力しています。自動取得は行っていません。
- 小売業界は各社の決算期が統一されていないため、他業界編のような「同じ決算期の数値で統一」ができない。本ツールは各社の直近の本決算をそれぞれ採用しており、5社の数値は同一時点のものではない点にご注意ください。
- ファーストリテイリングの「営業利益」に相当する指標は、同社IFRS決算で独立科目として存在する「事業利益」を採用しています。同社の決算短信には一般的な「営業利益」という科目自体が存在しません。
- ROE(自己資本利益率)は、各社が決算短信で個別に公表する値ではなく、EPS(1株当たり当期利益)÷ BPS(1株当たり純資産、期末値)で5社統一の計算式により算出した簡易値です。
- ROA(総資産利益率)は、資産合計の実額から算出した値ではなく、上記の簡易ROEに自己資本比率を掛けて逆算した簡易値です(ROE=ROA÷自己資本比率という恒等式の逆算)。
- 株式分割: ニトリホールディングス(2025年10月1日付、1株→5株)・良品計画(2025年9月1日付、1株→2株)・イオン(2025年9月、1株→3株)は直近1年以内に株式分割を実施しています。良品計画は決算期末(2025年8月31日)が分割前のため、決算短信記載のEPS・BPSを分割比率で除して分割後換算した値を採用しています。ニトリホールディングス・イオンは決算短信内で分割後基準に統一されていることを確認済みです。
- PBR(実績)は、各社の株価 ÷ BPS(本データのbps、決算期末実績値)で算出した自己算出値です。証券情報サイトが表示するPBRは決算期末より後の時点のBPSを分母にしている場合があり、本データの値とは一致しないことがあります。
- 株価・PER・PBR・配当利回り・時価総額は2026年7月31日(東証終値)、時価総額・発行済株式数は同日時点時点の市場データです。
- ネットキャッシュ(現金及び現金同等物-有利子負債)は、5社とも連結ベースで算出しています。セブン&アイ・ホールディングスは金融サービス事業(セブン銀行等)を含む複合的な事業構成ですが、セグメント別の資産・負債の分離開示が困難なため、自動車業界編のような金融事業の区分は行わず連結ベースで統一しています。
- 小売業界特有の指標(既存店売上高伸び率・在庫回転率等)は、開示粒度・定義が会社ごとに大きく異なり正規化コストが高いため、本v1では追加していません。既存の指標セットのみで比較しています。
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※本ツールは各社の決算短信に基づく財務指標を業界内で相対比較する情報提供を目的としており、投資助言・売買推奨ではありません。特定の企業への投資を推奨するものではなく、投資判断はご自身の責任で行ってください。数値は算出時点のものであり、最新の情報は各社のIR資料でご確認ください。