更新日: 2026年10月5日
Revenue Multiple(売上高倍率、PSR)とは
時価総額を売上高で割った倍率(PSR=Price to Sales Ratioとも呼ばれます)。利益がマイナスでPERが算出できない赤字企業でも、売上高さえあれば算出できる株価指標です。
かみ砕いた説明
Revenue Multiple(売上高倍率)は、会社の時価総額が売上高の何倍になっているかを示す株価指標で、PSR(Price to Sales Ratio、株価売上高倍率)とも呼ばれます。「この会社の1年分の売上高に対して、市場はその何倍の値段をつけているか」を表します。
PERが「利益」を、PBRが「純資産」を基準に株価水準を測るのに対し、Revenue Multipleは「売上高」を基準にする点が異なります。
計算式と計算例
Revenue Multiple = 時価総額 ÷ 売上高(= 株価 ÷ 1株あたり売上高)
トヨタ自動車の場合、当サイトの自動車業界トップ5 財務諸表比較ツールに掲載している時価総額43兆2,814億円を、2026年3月期の売上高50兆6,849億円で割ると、
43兆2,814億円 ÷ 50兆6,849億円 ≒ 0.85倍
となります。市場はトヨタの1年分の売上高よりやや低い値段を会社全体につけている、という意味です。
赤字企業でも比較できる
Revenue Multipleが特に役立つのは、赤字企業を比較するときです。当期が最終赤字の企業はPERの分母(利益)がマイナスになり、実績PERを算出できません。一方、売上高はよほどのことがない限りマイナスにならないため、Revenue Multipleは黒字・赤字を問わず同じ基準で比べられます。
自動車業界の5社で見ると、2026年3月期に最終赤字だったホンダ(0.33倍)・日産(0.10倍)も、黒字のトヨタ(0.85倍)・スズキ(0.64倍)・マツダ(0.15倍)と同じ物差しで並べられます。当サイトの自動車業界ツールのバリュエーション・マップでは、縦軸にPER、横軸にRevenue Multipleを取り、5社の株価水準を2つの軸で比較しています。
PERとの関係
Revenue MultipleとPERは、次の式でつながっています。
Revenue Multiple = 時価総額 ÷ 売上高 =(時価総額 ÷ 純利益)×(純利益 ÷ 売上高)= PER × 純利益率
つまりRevenue Multipleは、PERに売上高純利益率を掛けたものです。PERが同じ15倍の2社でも、純利益率が10%の会社のRevenue Multipleは1.5倍、2%の会社は0.3倍になります。Revenue Multipleの差の多くは、利益率の差で説明できるということです(会社予想PERを使う場合は、利益の対象期がずれるため式どおりには一致しません)。
業界によって水準が10倍以上違う
Revenue Multipleは、業界をまたぐと水準がまったく異なります。当サイトの業界比較ツールに掲載している各社の数値から、業界ごとの単純平均と営業利益率の平均を並べると次のとおりです。
| 業界(対象企業数) | Revenue Multipleの平均 | 営業利益率の平均 |
|---|---|---|
| 精密機器・FA機器(3社) | 10.3倍 | 31.7% |
| 小売(5社) | 3.1倍 | 9.2% |
| 銀行(5社) | 2.6倍 | 20.9%(経常利益率) |
| 不動産(5社) | 1.8倍 | 18.0% |
| 通信(3社) | 1.5倍 | 14.9% |
| 商社(5社) | 1.0倍 | 3.9%(2社のみ算出可) |
| 建設(4社) | 0.8倍 | 7.5% |
| 自動車(5社) | 0.4倍 | 3.4% |
おおまかに、営業利益率が高い業界ほどRevenue Multipleも高い傾向が見て取れます。売上高1円あたりから生まれる利益が多い会社ほど、同じ売上高に対して高い値段がつくのは自然なことです。個社で見ても、営業利益率51%のキーエンスは18.1倍と突出しており、営業利益率がほぼゼロ(0.5%)の日産は0.10倍にとどまっています。
小売業界の平均が3倍台と高めなのは、ファーストリテイリング(7.3倍)・良品計画(6.0倍)という、高い成長期待を持たれている2社が平均を押し上げているためです。同じ業界の中でも、成長期待の違いによって倍率に大きな差が生じます。
よくある誤解・注意点
- Revenue Multipleが低い=割安とは限らない: 売上高は利益率を反映しません。利益率が低い(あるいは赤字の)会社の倍率が低いのは当然であり、それだけで「割安」とは言えません。必ず営業利益率とあわせて見ることが大切です
- 業界をまたいだ比較には向かない: 上表のとおり業界ごとに水準が大きく異なるため、自動車株と精密機器株をRevenue Multipleで比べて優劣をつけることにはあまり意味がありません。同じ業界内、似たビジネスモデルの会社同士で比べるのが基本です
- 銀行・商社では「売上高」の意味が異なる: 銀行には売上高という科目がないため、当サイトでは経常収益で代用しています。商社も取引額をどこまで売上高(収益)に計上するかが会計基準によって異なります。こうした業界では参考値として扱うのが適切です
- 成長企業の評価でよく使われる: 利益がまだ出ていない、または投資先行で利益が小さい成長企業の評価では、PERの代わりにRevenue Multipleが使われることがよくあります。その場合も、将来どの程度の利益率に到達できるかという見通しが倍率の前提になっています
業界ごとの数値の分布は、業界横断まとめで8業界を横並びにして確認できます。