不動産業界トップ5 財務諸表比較

三井不動産・三菱地所・住友不動産・野村不動産ホールディングス・東急不動産ホールディングスについて、各社直近の本決算の主要財務指標を横並びで比較します。保有物件を裏付けとした有利子負債で開発資金を調達する事業モデルのため、自己資本比率は26〜34%と自動車・商社業界より低く出ています。

対象決算
2026年4月24日〜5月13日発表の2026年3月期決算短信
出典
各社の決算短信(下記「会社概要・会計基準」に各社IRページへのリンクを掲載)
株価等の基準日
2026年8月6日時点
更新日
データ: /解説:
ネットキャッシュ・有利子負債についてのご注意:5社ともネットキャッシュ(現金及び現金同等物-有利子負債)は大幅なマイナスです。これは保有物件という担保価値のある資産を裏付けに長期の開発資金を借り入れる、不動産業界の事業モデル上当然の状態であり、経営の危険信号ではありません。また、住友不動産は決算短信に有利子負債の単一の合計開示がないため、貸借対照表の個別科目を合算した自社集計の参考値を掲載しています。

バリュエーション・マップ(PER × 売上高倍率)

0.7倍1倍1.5倍2倍3倍10倍12倍15倍20倍 三菱地所: PER(会社予想) 19.71倍 / Revenue Multiple(売上高倍率、PSR) 2.66倍 / 時価総額 46,506億円 三菱地所 住友不動産: PER(会社予想) 14.69倍 / Revenue Multiple(売上高倍率、PSR) 3.14倍 / 時価総額 33,191億円 住友不動産 三井不動産: PER(会社予想) 14.19倍 / Revenue Multiple(売上高倍率、PSR) 1.49倍 / 時価総額 40,465億円 三井不動産 東急不動産ホールディングス: PER(会社予想) 9.20倍 / Revenue Multiple(売上高倍率、PSR) 0.74倍 / 時価総額 9,198億円 東急不動産 野村不動産ホールディングス: PER(会社予想) 8.96倍 / Revenue Multiple(売上高倍率、PSR) 0.82倍 / 時価総額 7,701億円 野村不動産時価総額を売上高で割った倍率(PSR=Price to Sales Ratioとも呼ばれます)。利益がマイナスでPERが算出できない赤字企業でも、売上高さえあれば算出できる株価指標です。詳しくはこちら →Price Earnings Ratioの略。株価が1株あたり利益(EPS)の何倍まで買われているかを示す指標で、株価が利益水準に対して割高か割安かの目安として使われます。詳しくはこちら →
三井不動産三菱地所住友不動産野村不動産ホールディングス東急不動産ホールディングス

縦軸はPrice Earnings Ratioの略。株価が1株あたり利益(EPS)の何倍まで買われているかを示す指標で、株価が利益水準に対して割高か割安かの目安として使われます。詳しくはこちら →、横軸は時価総額を売上高で割った倍率(PSR=Price to Sales Ratioとも呼ばれます)。利益がマイナスでPERが算出できない赤字企業でも、売上高さえあれば算出できる株価指標です。詳しくはこちら →で、いずれも対数スケールです。バブルの大きさは時価総額を表します。数値の詳細は下記「指標比較表」または各バブルにカーソルを合わせてご確認ください。

資本効率マップ(ROA × 自己資本比率)

Return On Equityの略。株主が出した資本(自己資本)に対して、企業がどれだけ効率的に利益を生み出したかを示す指標です。当期純利益÷自己資本で算出します。詳しくはこちら →という1つの数字が「本業の稼ぐ力(Return on Assetsの略。負債も含めた総資産全体に対して、企業がどれだけ効率的に利益を生み出したかを示す指標です。当期純利益÷総資産で算出します。詳しくはこちら →)」と「レバレッジ(総資産のうち、返済不要の自己資本(株主資本)がどれだけの割合を占めるかを示す指標。数字が高いほど負債への依存度が低く、財務的な余力が大きいとされます。詳しくはこちら →の低さ)」のどちらでできているかを分解して見るチャートです。5社ともROAは2.5〜2.9%と極めて近い水準に集中しており、ROEの差(8%台〜11%弱)は本業の収益力の差というより、自己資本比率(=レバレッジ)の差によって生まれていることが分かります。

ROE 6%ROE 8%ROE 10%ROE 12%ROE 14%24%26%28%30%32%34%36%2.2%2.4%2.6%2.8%3.0%3.2% 野村不動産ホールディングス: ROA(総資産利益率、簡易値) 2.9% / 自己資本比率 28.5% / ROE(自己資本利益率、簡易値) 10.3% 野村不動産 東急不動産ホールディングス: ROA(総資産利益率、簡易値) 2.8% / 自己資本比率 26.3% / ROE(自己資本利益率、簡易値) 10.8% 東急不動産 住友不動産: ROA(総資産利益率、簡易値) 2.9% / 自己資本比率 34.4% / ROE(自己資本利益率、簡易値) 8.5% 住友不動産 三井不動産: ROA(総資産利益率、簡易値) 2.7% / 自己資本比率 32.4% / ROE(自己資本利益率、簡易値) 8.4% 三井不動産 三菱地所: ROA(総資産利益率、簡易値) 2.6% / 自己資本比率 31.4% / ROE(自己資本利益率、簡易値) 8.2% 三菱地所総資産のうち、返済不要の自己資本(株主資本)がどれだけの割合を占めるかを示す指標。数字が高いほど負債への依存度が低く、財務的な余力が大きいとされます。詳しくはこちら →Return on Assetsの略。負債も含めた総資産全体に対して、企業がどれだけ効率的に利益を生み出したかを示す指標です。当期純利益÷総資産で算出します。詳しくはこちら →
三井不動産三菱地所住友不動産野村不動産ホールディングス東急不動産ホールディングス

横軸は自己資本比率、縦軸はROA(簡易値=ROE×自己資本比率で逆算した値)で、いずれも線形スケールです。バブルの大きさは時価総額です。5社のROAが2.5〜2.9%の狭いレンジに集中しているため、他業界編より軸の幅を狭く表示しています。

ネットキャッシュ比較チャート

ネットキャッシュ(現金及び現金同等物-有利子負債)は、借入金をすべて返済してもなお現金がどれだけ残るかを表す指標です。5社とも保有物件の取得・開発資金を有利子負債でまかなっているため、大幅なマイナスとなっています。

-4兆円-2兆円0兆円野村不動産ホールディングス: ネットキャッシュ -15,625億円野村不動産-15,625億円東急不動産ホールディングス: ネットキャッシュ -16,464億円東急不動産-16,464億円三菱地所: ネットキャッシュ -33,308億円三菱地所-33,308億円住友不動産: ネットキャッシュ -39,176億円住友不動産-39,176億円三井不動産: ネットキャッシュ -45,502億円三井不動産-45,502億円

ネットキャッシュの大きい順(マイナス幅が小さい順)に5社を並べた横棒グラフです。単位は兆円(軸目盛り)、バー上のラベルは億円単位の実数です。5社とも連結ベースで統一して算出しています。

指標比較表

指標三井不動産三菱地所住友不動産野村不動産ホールディングス東急不動産ホールディングス
規模
売上高(売上収益・経常収益)27,097億円17,461億円10,578億円9,425億円12,460億円
売上高成長率(前期比)+3.2%+10.5%+4.3%+24.4%+8.3%
収益性
営業利益(経常利益)3,978億円3,297億円2,992億円1,382億円1,669億円
営業利益率(経常利益率)14.7%18.9%28.3%14.7%13.4%
当期純利益2,787億円2,225億円2,125億円829億円967億円
Return On Equityの略。株主が出した資本(自己資本)に対して、企業がどれだけ効率的に利益を生み出したかを示す指標です。当期純利益÷自己資本で算出します。詳しくはこちら →8.4%8.2%8.5%10.3%10.8%
Return on Assetsの略。負債も含めた総資産全体に対して、企業がどれだけ効率的に利益を生み出したかを示す指標です。当期純利益÷総資産で算出します。詳しくはこちら →2.7%2.6%2.9%2.9%2.8%
EPS(1株当たり利益)101.04円181.80円228.42円96.69円135.45円
財務健全性
総資産のうち、返済不要の自己資本(株主資本)がどれだけの割合を占めるかを示す指標。数字が高いほど負債への依存度が低く、財務的な余力が大きいとされます。詳しくはこちら →32.4%31.4%34.4%28.5%26.3%
BPS(1株当たり純資産)1206.06円2229.21円2675.04円938.08円1260.05円
現金及び現金同等物823億円2,801億円583億円368億円1,805億円
有利子負債46,325億円36,109億円39,759億円15,994億円18,269億円
ネットキャッシュ-45,502億円-33,308億円-39,176億円-15,625億円-16,464億円
市場評価
1株配当(会社予想)37円49円52円44円50円
株価1488.0円3840.0円3546.0円901.6円1290.5円
Price Earnings Ratioの略。株価が1株あたり利益(EPS)の何倍まで買われているかを示す指標で、株価が利益水準に対して割高か割安かの目安として使われます。詳しくはこちら →14.19倍19.71倍14.69倍8.96倍9.20倍
PBR(実績)1.23倍1.72倍1.33倍0.96倍1.02倍
配当利回り(会社予想)2.49%1.28%1.47%4.88%3.88%
時価総額40,465億円46,506億円33,191億円7,701億円9,198億円
時価総額を売上高で割った倍率(PSR=Price to Sales Ratioとも呼ばれます)。利益がマイナスでPERが算出できない赤字企業でも、売上高さえあれば算出できる株価指標です。詳しくはこちら →1.49倍2.66倍3.14倍0.82倍0.74倍

決算数値の算出基準: 2026年4月24日〜5月13日発表の2026年3月期決算短信/株価・PER・PBR・配当利回り・時価総額の基準: 2026年8月6日時点

不動産業界のビジネスモデルと財務構造

大手不動産会社(総合デベロッパー)の収益は、オフィスビル・商業施設・物流施設などを保有して賃料を得る賃貸事業、マンションや戸建てを開発して売る分譲事業、開発した物件を投資家やREITに売却する投資家向け売却、仲介・管理などのサービス事業に分かれます。賃貸事業は景気変動に比較的強い安定収益、分譲・物件売却は利益の振れが大きい収益という性格の違いがあります。

財務構造の特徴は、開発・取得に巨額の資金が必要なため、保有物件を裏付けとした長期の借入で資金を調達する高レバレッジの事業モデルであることです。ネットキャッシュが兆円単位のマイナスになるのは業態上当然の状態で、むしろ金利上昇が支払利息の増加を通じて利益を圧迫するリスクに注目する必要があります。

もう一つの重要な特徴が賃貸不動産の含み益です。保有するオフィスビル等は取得原価ベースで計上されるため、時価との差額(含み益)は貸借対照表の純資産には反映されません。各社は有価証券報告書で賃貸等不動産の時価を注記しており、帳簿上のPBRが実態の資産価値に対する評価を表していない点に注意が必要です。

不動産業界で注目したい指標の読み方

自己資本比率・有利子負債
大手デベロッパーの自己資本比率は25〜35%程度が一般的で、製造業の目安(40%以上)より低くても問題とはされません。比較の際は水準そのものより、有利子負債の増加ペースが利益(EBITDA等)の伸びに見合っているかを確認します。
ROA
巨額の不動産を保有するため、ROAは2〜3%程度と低く出ます。これに財務レバレッジ(総資産÷自己資本)をかけてROE8〜10%程度を実現するのが業界の標準的な姿で、ROEとROAの差が他業界より大きいのが特徴です。
PBR
賃貸不動産の含み益が純資産に反映されないため、帳簿上のPBRは実質的な資産価値に対して低めに出ます。含み益を加味した「実質的な純資産」との比較で割安度を判断するのが、不動産株ならではの見方です。

5社の比較から読み取れること(運営者の見解)

  1. 5社とも自己資本比率26〜34%、ROAは3%未満

    自己資本比率は26.3%(東急不動産HD)〜34.4%(住友不動産)、ROAは2.6%〜2.9%と、5社の財務構造は非常に似通っています。そのうえでROEは8.2%〜10.8%で、レバレッジが高い野村不動産HD・東急不動産HDほどROEが高く出る、という教科書通りの関係が確認できます。

  2. 住友不動産の営業利益率28.3%はオフィス賃貸偏重の表れ

    住友不動産の営業利益率は28.3%と、5社平均(約18%)を大きく上回ります。売上高は5社で下から2番目ながら、利益率の高いオフィス賃貸の比率が高い事業構成が数字に表れています。逆に分譲・サービス事業の比率が高い会社ほど売上高は大きく、利益率は低めに出ます。

  3. 大手3社と準大手2社で市場評価が分かれる

    三井不動産・三菱地所・住友不動産のPERは14.2〜19.7倍なのに対し、野村不動産HD(8.96倍)・東急不動産HD(9.2倍)は10倍を下回り、配当利回りも4.88%・3.88%と高水準です。ROEは準大手2社のほうが高いにもかかわらず低い評価にとどまっており、都心の大型賃貸資産の厚みの差を市場が評価していると考えられます。

  4. ネットキャッシュは5社とも1.5兆円超のマイナス

    ネットキャッシュは三井不動産の−4.55兆円を筆頭に、最も小さい野村不動産HDでも−1.56兆円と、5社とも大幅なマイナスです。これは開発資金を借入で賄う事業モデル上の特徴ですが、金利上昇局面では支払利息の増加が利益を圧迫する感応度が他業界より高い点を意識しておく必要があります。

※上記は掲載データをもとにした運営者の見解であり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。

会社概要・会計基準

三井不動産(8801)

日本基準

2026年3月期(通期、2025年4月1日〜2026年3月31日)

三井不動産 2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結) →

三菱地所(8802)

日本基準

2026年3月期(通期、2025年4月1日〜2026年3月31日)

三菱地所 2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結) →

住友不動産(8830)

日本基準

2026年3月期(通期、2025年4月1日〜2026年3月31日)

住友不動産 2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結) →

野村不動産ホールディングス(3231)

日本基準

2026年3月期(通期、2025年4月1日〜2026年3月31日)

野村不動産ホールディングス 2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結) →

東急不動産ホールディングス(3289)

日本基準

2026年3月期(通期、2025年4月1日〜2026年3月31日)

東急不動産ホールディングス 2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結) →

算出方法・データソース

※本ツールは各社の決算短信に基づく財務指標を業界内で相対比較する情報提供を目的としており、投資助言・売買推奨ではありません。特定の企業への投資を推奨するものではなく、投資判断はご自身の責任で行ってください。数値は算出時点のものであり、最新の情報は各社のIR資料でご確認ください。