株式100%か60:40か?代表的なポートフォリオ3パターンを比較する

ポートフォリオ理論資産配分分散投資

積立投資を始めるとき、多くの人が最初に迷うのが「どの資産配分(ポートフォリオ)を選ぶか」です。「株式100%が一番増える」という話も聞けば、「債券も混ぜてリスクを抑えるべき」という話も聞きます。どちらも間違いではありませんが、実際にどれくらいリターンとリスクが変わるのかを数字で見た上で選んでいる人は、意外と多くありません。

本記事では、ポートフォリオ比較ページにある代表的な資産配分のうち3パターン——全世界株式インデックス(株式100%)株式60%・債券40%GPIF基本ポートフォリオ——を、期待リターン・標準偏差・積立シミュレーション結果の3つの観点で比較します(ページに掲載されているもう1つの配分「オールウェザー・ポートフォリオ」についてはツール解説の記事で扱っています)。

3つのポートフォリオの構成

ポートフォリオ 構成 特徴
全世界株式インデックス 全世界株式 100% 単一資産でシンプル。リターン・リスクともに高め
株式60%・債券40% 世界株式60% + 世界債券40% 相関の低い株式と債券を組み合わせた伝統的な配分
GPIF基本ポートフォリオ 国内株式25% + 外国株式25% + 国内債券25% + 外国債券25% 日本の公的年金を運用するGPIFが採用する、国内外・株式債券に均等分散する設計

GPIF基本ポートフォリオの詳しい設計思想はこちらの記事で詳しく解説しています。

期待リターン・標準偏差の比較

各資産の期待リターン・標準偏差・相関から算出した、ポートフォリオ全体の期待リターンと標準偏差は次のとおりです(ポートフォリオ比較ページの想定値に基づく)。

ポートフォリオ 期待リターン 標準偏差(リスク)
全世界株式インデックス 5.0% 15.0%
株式60%・債券40% 3.7% 9.7%
GPIF基本ポートフォリオ 3.4% 9.4%

ここで一つ興味深い点があります。株式60:40とGPIF基本ポートフォリオは、資産の組み方がまったく異なる(前者は2資産、後者は国内外の株式・債券4資産に均等分散)にもかかわらず、標準偏差はどちらも9%台とほぼ同水準です。これは、GPIF型が「国内株式と外国株式」のように相関の高い資産同士を含む一方で、「株式と債券」という相関の低い(あるいはマイナスの)組み合わせも同時に持っているため、資産点数を増やした分散効果と、相関の高い資産を含むことによる分散効果の目減りが、ちょうど打ち消し合っているためです。分散投資は「資産の数を増やせば増やすほど良い」という単純な話ではなく、資産同士の値動きの相関が効いてくることがわかります。

積立シミュレーションでの比較(毎月3万円・20年)

期待リターン・標準偏差の違いが、実際の積立結果にどう表れるかを、積立シミュレーターと同じロジックで試算しました。初期投資0円・毎月3万円・積立期間20年の条件です。

20年目時点の資産額(積立元本720万円に対して)

ポートフォリオ 下位10%タイル 中央値 上位90%タイル
全世界株式インデックス 663万円(-7.9%) 1,116万円(+55.0%) 1,947万円(+170.4%)
株式60%・債券40% 734万円(+1.9%) 1,028万円(+42.7%) 1,468万円(+103.9%)
GPIF基本ポートフォリオ 717万円(-0.5%) 993万円(+38.0%) 1,396万円(+93.9%)

中央値だけを見ると、全世界株式インデックスが最も大きく増えています。しかし下位10%タイルに注目すると、全世界株式インデックスは20年経ってもなお元本を7.9%下回る可能性が10回に1回程度残るのに対し、株式60:40はむしろ元本をわずかに上回る水準(+1.9%)で下げ止まりやすく、GPIF基本ポートフォリオもほぼ元本近辺(-0.5%)に収まっています。「期待リターンが高い方が得」とは単純に言えず、どこまでの下振れを許容できるかによって、最適な選択は変わります。

1年間の下落レンジ比較

短期的な値動きの違いも見てみます。すでに300万円を積み立てた状態から1年間保有した場合の下落レンジです。

ポートフォリオ 1年後 下位10%タイル 1年後 上位90%タイル
全世界株式インデックス 257万円(-14.2%) 378万円(+25.9%)
株式60%・債券40% 274万円(-8.7%) 350万円(+16.7%)
GPIF基本ポートフォリオ 274万円(-8.7%) 348万円(+16.0%)

全世界株式インデックスは、1年間で40万円以上(-14%超)目減りする可能性が10回に1回程度あります。この振れ幅を「許容できるリスク」として受け入れられるかどうかが、ポートフォリオ選びの実質的な分かれ目です。自分自身の下落許容度の考え方は、新NISAのつみたて投資、何%の下落まで許容できるか自分で試算する方法で詳しく解説しています。

どう選べばよいか

3パターンを比較すると、次のような傾向が見えてきます。

  • 全世界株式インデックス: 長期的な期待リターンは最も高いが、値動きの幅も最も大きい。積立期間を長く取れて、下落局面でも積立をやめない自信がある人向け
  • 株式60%・債券40%: 株式100%よりリスクを抑えつつ、債券だけよりは高いリターンを狙う、バランス重視の伝統的な配分
  • GPIF基本ポートフォリオ: 国内外・株式債券への均等分散により、60:40と近いリスク水準を、4資産という異なる組み合わせで実現している設計

「どれが正解か」はリターンの大小だけでは決まらず、自分がどこまでの下落を受け入れられるかによって変わります。実際に自分の積立額・期間で試算したい場合は、積立シミュレーターでポートフォリオを選び直しながら確認してみてください。

なお、いったん決めた配分も、暴落が起きると株式と債券の値動きの違いによって崩れていきます。崩れた配分をどう戻すかについては、暴落でポートフォリオの配分が崩れたとき、どうリバランスするかで解説しています。

まとめ

  • 期待リターン・標準偏差はポートフォリオごとに異なり、GPIF型のような分散配分は資産点数を増やしても、資産間の相関次第でリスク水準は単純な2資産配分と大差ない場合がある
  • 中央値だけでなく下位10%タイル(下振れ)を見ると、「期待リターンが高い=常に得」ではないことがわかる
  • ポートフォリオ選びは、自分がどこまでの下落を許容できるかという基準で考えるとよい