暴落でポートフォリオの配分が崩れたとき、どうリバランスするか

リバランス暴落ポートフォリオ理論

株式60%・債券40%のような資産配分を決めて積立を始めても、その比率は時間とともに崩れていきます。株式と債券は値動きが異なるため、放置していると当初の比率からどんどん乖離していくからです。特に暴落局面では、この乖離が一気に大きくなります。本記事では、この崩れた配分をどう戻すか(リバランス)の考え方を解説します。

なぜ配分は崩れるのか(具体例)

たとえば1,000万円を株式60%(600万円)・債券40%(400万円)で保有していたとします。ここで株式が-30%下落し、債券は横ばいだったとすると、

  • 株式: 600万円 × (1-0.30) = 420万円
  • 債券: 400万円 × 1.0 = 400万円
  • 合計: 820万円
  • 株式比率: 420 ÷ 820 ≈ 51%

当初60%だった株式比率は、暴落によって51%まで下がります。これをそのまま放置するか、60:40に戻すか、というのがリバランスの判断です。

リバランスの基本的な考え方

リバランスとは、目標比率から乖離した分を「値上がりした資産を売り、値下がりした資産を買う」ことで元の比率に戻す作業です。上の例では、820万円を60:40に戻すには株式を492万円にする必要があるため、420万円→492万円、つまり72万円分の株式を買い増すことになります。

これは結果的に「値下がりした資産を機械的に買い増す」ことと同じです。暴落時に「怖いから買う」のは難しくても、あらかじめ決めたルールに従って淡々と実行するリバランスであれば、感情を挟まずに実行しやすくなります。

リバランスのタイミング・方法

代表的な方法は3つあります。

  • 定期リバランス: 年1回など、あらかじめ決めた頻度で目標比率に戻す。シンプルでルール化しやすく、判断に迷う余地が少ない
  • 乖離幅リバランス: 目標比率から一定幅(例: ±5ポイント)乖離したら実行する。暴落のような急な変動に素早く対応できる一方、こまめなチェックが必要
  • 新規拠出金での調整: 積立を継続している場合、既存の保有資産は売却せず、毎月の新規拠出を一時的に値下がりした資産に多く振り向けることで、緩やかに比率を戻す方法。売却を伴わないため、後述するNISAの非課税枠を無駄にしにくい

実際に自分の保有額でどれだけ乖離しているか、いくら売買すれば目標比率に戻るかは、リバランス計算機に現在の評価額を入力するだけで自動計算できます。

シミュレーションで見る「リバランスの効果」

株式60%・債券40%のポートフォリオ(相関0.15)で、初期投資0円・毎月3万円・20年間積み立てた場合を、「年1回リバランスする場合」と「まったくリバランスしない場合(新規拠出は60:40で投入するが、既存の保有資産は一切売買しない)」で比較しました。

経過年数 リバランスあり(下位10%/中央値/上位90%) リバランスなし(下位10%/中央値/上位90%)
5年 167万円/196万円/232万円 167万円/196万円/234万円
10年 339万円/429万円/546万円 339万円/426万円/555万円
15年 529万円/702万円/956万円 523万円/696万円/983万円
20年 730万円/1,025万円/1,475万円 726万円/1,014万円/1,538万円

意外に思われるかもしれませんが、中央値で見るとリバランスの有無による差はごくわずかです。むしろリバランスなしの方が上位90%タイル(1,538万円)はやや高くなっています。これは、値上がりした株式をそのまま持ち続けることで、上振れ局面ではリターンが伸びやすくなるためです。

では何が違うのか。20年経過時点での「実際の株式比率」を見ると、その答えが見えてきます。

  • リバランスなしの場合、20年後の株式比率は中央値で66.1%、上振れケースでは**77.6%**まで上昇していることがあります(当初は60%)

つまりリバランスなしの場合、知らないうちに株式比率がじわじわ上昇し、当初決めたはずのリスク水準から逸脱してしまうのです。リバランスの本質的な効果は「リターンを底上げすること」ではなく、**「当初決めたリスク水準を維持し続けること」**にあります。上振れリターンをあえて追わず、暴落時の下振れも当初想定の範囲に抑えたいなら、リバランスは有効な手段です。

新NISAでリバランスするときの注意点

新NISAは運用益が非課税になる制度ですが、非課税で保有できる枠(生涯非課税限度額)には上限があります。売却した分の枠は翌年以降に復活する仕組みになっているため、リバランスのたびに頻繁な売買を繰り返すと、枠の再利用のタイミングやその年の投資可能額に影響が出ることがあります。制度の詳細は変更されることがあるため、実際に売買する前に最新のルールを確認してください。

こうした事情から、個人の積立投資では次のような選択肢も現実的です。

  • 既存の保有資産は売却せず、新規拠出の配分だけで緩やかに調整する(前述の「新規拠出金での調整」)
  • 株式・債券をあらかじめ決まった比率で保有する、バランス型(自動リバランス型)のファンドを使う(ファンド内部で自動的にリバランスが行われるため、自分で売買する必要がない)

「リバランス」と「暴落が怖くて配分を変える」は別物

最後に、重要な注意点があります。リバランスとは、あらかじめ決めた目標比率に機械的に戻す行為です。暴落が怖くなって「株式比率を60%から40%に下げよう」と判断を変えるのは、リバランスではなく、当初の投資方針そのものを変更する行為です。この2つを混同すると、暴落のたびに場当たり的にリスクを取ったり減らしたりすることになり、かえって長期的な資産形成の再現性を損ないます。目標比率をどこに置くかは、自分がどこまでの下落に耐えられるかを暴落が起きる前に決めておき、暴落中はその比率に淡々と戻すことに徹するのが、リバランスの本来の考え方です。

まとめ

  • 株式と債券は値動きが異なるため、放置すると資産配分は暴落時に大きく崩れる
  • リバランスとは、値上がりした資産を売り値下がりした資産を買うことで、目標比率に戻す作業
  • シミュレーションでは、リバランスの有無によるリターンの差はわずかだが、リバランスなしでは株式比率が知らないうちに上昇し、リスク水準が当初想定からずれていく
  • 新NISAでは非課税枠の再利用ルールがあるため、売却を伴わない「新規拠出での調整」やバランス型ファンドの活用も選択肢になる
  • 暴落時に目標比率へ戻す「リバランス」と、怖くなって目標比率そのものを変えることは、まったく別物として区別する