新NISAのつみたて投資、何%の下落まで許容できるか自分で試算する方法

リスク許容度新NISAポートフォリオ理論

新NISAのつみたて投資枠を使って積立を始めた人の多くは、「暴落が来たとき、自分は本当に積立をやめずにいられるか」を事前に考えないまま投資を始めています。しかし長期投資において最大のリスクは、実は市場の下落そのものではなく、下落局面で不安になって積立をやめてしまう(あるいは売却してしまう)ことです。

これを避けるには、「自分が選んだポートフォリオが、どの程度の下落までなら統計的にありえるのか」をあらかじめ数字で把握しておくことが有効です。本記事では、モンテカルロ・シミュレーションの考え方を踏まえて、実際に自分の下落許容度を試算する方法を解説します。

なぜ「暴落への耐性」を先に決めておくべきか

期待リターンの高いポートフォリオほど、長期的な資産形成には有利に見えます。しかし期待リターンが高い資産クラスは、多くの場合それに見合って値動きの幅(リスク)も大きくなります。この関係を理解せずに「期待リターンが高いから」という理由だけでポートフォリオを選ぶと、実際に大きな下落が起きたときに想定以上の含み損に直面し、積立を継続できなくなるおそれがあります。

理論上のリターンは、あくまで「積立を最後まで継続できた場合」に得られるものです。途中でやめてしまえば、そのポートフォリオの期待リターンは意味を持ちません。だからこそ、ポートフォリオを選ぶ段階で「自分がどこまでの下落に耐えられるか」を先に見積もっておく必要があります。

標準偏差から「ありえる下落幅」をざっくり読み解く

金融工学では、資産のリターンのばらつきを標準偏差という数値で表します。ざっくりとした近似として、リターンが正規分布に従うと仮定すると、次のような目安が使えます。

  • 期待リターン ± 標準偏差(1標準偏差)の範囲に、約68%の確率で収まる
  • 期待リターン ± 標準偏差 × 2(2標準偏差)の範囲に、約95%の確率で収まる

ポートフォリオ比較ページの想定値を例に見てみます。

ポートフォリオ 期待リターン 標準偏差 1年後リターンの目安(1標準偏差)
全世界株式インデックス(株式100%) 5.0% 15.0% 約-10%〜+20%
株式60%・債券40% 3.7% 9.7% 約-6%〜+13%

株式100%のポートフォリオは、1年間で-10%程度の下落は「よくあること」の範囲に入り、2標準偏差まで見れば-25%程度の下落も統計的にはありえます。一方で60:40のポートフォリオは、同じ考え方でも下落の目安は-6%程度に収まります。これが「株式比率を下げるとリスクが下がる」ということの数字的な意味です。

ただし、これはリターンの分布を単純化した近似にすぎません。より実態に近い形で下落幅を把握するには、モンテカルロ・シミュレーションを使うのが確実です。

積立シミュレーターで実際のレンジを試算する

当サイトの積立シミュレーターを使うと、この「ありえる下落幅」を実際の金額ベースで確認できます。試しに、すでに300万円を積み立てた状態から1年間保有した場合を、上の2つのポートフォリオで試算してみます。

ポートフォリオ 1年後 下位10%タイル 1年後 中央値 1年後 上位90%タイル
全世界株式インデックス 257万円(-14%) 312万円(+4%) 378万円(+26%)
株式60%・債券40% 274万円(-9%) 310万円(+3%) 351万円(+17%)

全世界株式インデックスの場合、「1年間で40万円以上(-14%)目減りする可能性が10回に1回程度はある」ということが、具体的な金額として見えてきます。この金額を見て「自分はこれが起きても積立を継続できるか」を自問することが、ポートフォリオ選びの実質的な意思決定になります。

自分で試算する3ステップ

  1. ポートフォリオ比較ページで、候補となる資産配分の期待リターン・標準偏差を確認する
  2. 積立シミュレーターに自分の積立額・期間を入力し、グラフの帯(10〜90%レンジ)の下端がどのくらいの水準かを確認する
  3. その下端の金額(下位10%タイルの含み損)を見て、実際に自分の資産としてそれが起きたときに積立をやめずにいられそうか、率直に考える

許容できなければ、ポートフォリオを見直す

ステップ3で「これは耐えられなさそうだ」と感じた場合は、期待リターンを追い求めるのではなく、株式比率を下げる(60:40やGPIF型の配分に変える)、あるいは積立額・投資期間そのものを見直すという選択肢があります。

金融工学的に言えば、これは「期待リターンの最大化」ではなく「自分のリスク許容度の範囲内で継続可能な選択をすること」を優先する考え方です。多少期待リターンが低くても、暴落時に売らずに継続できるポートフォリオの方が、結果的に長期的なリターンを得られる可能性が高くなります。

注意点

本シミュレーションは、資産のリターンが対数正規分布に従うという前提のもとでの理論的な近似です。2008年の世界金融危機のような実際の暴落局面では、通常は相関の低い資産クラス同士の相関が急上昇し、分散投資の効果が薄れて、理論値以上に下落が大きくなることがあります。ここで示した数字は「平常時を前提にした目安」として捉え、過信しすぎないようにしてください。

まとめ

  • 積立を長期継続できるかどうかが、実際に得られるリターンを左右する最大の要因である
  • 標準偏差を使うと、ポートフォリオごとの「ありえる下落幅」をざっくり見積もれる
  • 積立シミュレーターを使えば、その下落幅を実際の金額として確認できる
  • 下位10%タイルの下落幅を見て「耐えられるか」を自問し、耐えられなければ株式比率を下げるなどポートフォリオを見直す