精密機器・FA機器業界トップ3 財務諸表比較

キーエンス・ファナック・SMCについて、各社直近の本決算の主要財務指標を横並びで比較します。3社とも自己資本比率90%前後・実質無借金という共通の特徴を持ち、財務レバレッジにほとんど頼らずに高いROEを実現している業界の実例です。

対象決算
2026年4月24日〜5月14日発表の2026年3月期決算短信
出典
各社の決算短信(下記「会社概要・会計基準」に各社IRページへのリンクを掲載)
株価等の基準日
2026年8月6日時点
更新日
データ: /解説:
対象社数・決算期についてのご注意:上場している精密機器・FA機器メーカーのうち、自己資本比率90%前後・実質無借金という財務プロファイルが揃うキーエンス・ファナック・SMCの3社を対象としています(安川電機・THKは自己資本比率が明確に低く、財務レバレッジの水準が3社と異なるため対象外としています)。また、キーエンスの決算期末は3月20日、ファナック・SMCは3月31日と、期末日が9〜10日ずれている点にもご注意ください。

バリュエーション・マップ(PER × 売上高倍率)

5倍7倍10倍15倍20倍25倍30倍35倍40倍50倍 キーエンス: PER(会社予想) 44.10倍 / Revenue Multiple(売上高倍率、PSR) 18.12倍 / 時価総額 211,918億円 キーエンス ファナック: PER(会社予想) 32.60倍 / Revenue Multiple(売上高倍率、PSR) 7.03倍 / 時価総額 60,282億円 ファナック SMC: PER(会社予想) 27.90倍 / Revenue Multiple(売上高倍率、PSR) 5.75倍 / 時価総額 48,407億円 SMC時価総額を売上高で割った倍率(PSR=Price to Sales Ratioとも呼ばれます)。利益がマイナスでPERが算出できない赤字企業でも、売上高さえあれば算出できる株価指標です。詳しくはこちら →Price Earnings Ratioの略。株価が1株あたり利益(EPS)の何倍まで買われているかを示す指標で、株価が利益水準に対して割高か割安かの目安として使われます。詳しくはこちら →
キーエンスファナックSMC

縦軸はPrice Earnings Ratioの略。株価が1株あたり利益(EPS)の何倍まで買われているかを示す指標で、株価が利益水準に対して割高か割安かの目安として使われます。詳しくはこちら →、横軸は時価総額を売上高で割った倍率(PSR=Price to Sales Ratioとも呼ばれます)。利益がマイナスでPERが算出できない赤字企業でも、売上高さえあれば算出できる株価指標です。詳しくはこちら →で、いずれも対数スケールです。バブルの大きさは時価総額を表します。3社とも高い利益率を反映してRevenue Multiple・PERともに他業界編より高い水準にあります。数値の詳細は下記「指標比較表」または各バブルにカーソルを合わせてご確認ください。

資本効率マップ(ROA × 自己資本比率)

Return On Equityの略。株主が出した資本(自己資本)に対して、企業がどれだけ効率的に利益を生み出したかを示す指標です。当期純利益÷自己資本で算出します。詳しくはこちら →という1つの数字が「本業の稼ぐ力(Return on Assetsの略。負債も含めた総資産全体に対して、企業がどれだけ効率的に利益を生み出したかを示す指標です。当期純利益÷総資産で算出します。詳しくはこちら →)」と「レバレッジ(総資産のうち、返済不要の自己資本(株主資本)がどれだけの割合を占めるかを示す指標。数字が高いほど負債への依存度が低く、財務的な余力が大きいとされます。詳しくはこちら →の低さ)」のどちらでできているかを分解して見るチャートです。3社とも自己資本比率が89〜95%と極めて高く(実質無借金)、ROEのほとんどがROA、つまり本業の利益率そのものによって作られていることが分かります。他業界編(銀行・小売のイオン等)で見られる「レバレッジで底上げされたROE」とは対照的な構造です。

ROE 6%ROE 8%ROE 10%ROE 12%ROE 14%89%91%93%95%6%7%8%9%10%11%12%13% キーエンス: ROA(総資産利益率、簡易値) 12.1% / 自己資本比率 94.6% / ROE(自己資本利益率、簡易値) 12.8% キーエンス ファナック: ROA(総資産利益率、簡易値) 8.0% / 自己資本比率 89.2% / ROE(自己資本利益率、簡易値) 8.9% ファナック SMC: ROA(総資産利益率、簡易値) 7.2% / 自己資本比率 91.5% / ROE(自己資本利益率、簡易値) 7.9% SMC総資産のうち、返済不要の自己資本(株主資本)がどれだけの割合を占めるかを示す指標。数字が高いほど負債への依存度が低く、財務的な余力が大きいとされます。詳しくはこちら →Return on Assetsの略。負債も含めた総資産全体に対して、企業がどれだけ効率的に利益を生み出したかを示す指標です。当期純利益÷総資産で算出します。詳しくはこちら →
キーエンスファナックSMC

横軸は自己資本比率、縦軸はROA(簡易値=ROE×自己資本比率で逆算した値)で、いずれも線形スケールです。バブルの大きさは時価総額です。3社の自己資本比率が89〜95%の狭いレンジに集中しているため、他業界編より軸の幅を狭く表示しています。

ネットキャッシュ比較チャート

ネットキャッシュ(現金及び現金同等物-有利子負債)は、借入金をすべて返済してもなお現金がどれだけ残るかを表す指標です。3社ともほぼ無借金のため、現金及び現金同等物のほぼ全額がそのままネットキャッシュとなっています。

0兆円0.2兆円0.4兆円0.6兆円ファナック: ネットキャッシュ 6,151億円ファナック6,151億円SMC: ネットキャッシュ 5,687億円SMC5,687億円キーエンス: ネットキャッシュ 4,513億円キーエンス4,513億円

ネットキャッシュの大きい順に3社を並べた横棒グラフです。単位は兆円(軸目盛り)、バー上のラベルは億円単位の実数です。3社とも連結ベースで統一して算出しています。

指標比較表

指標キーエンスファナックSMC
規模
売上高(売上収益・経常収益)11,693億円8,578億円8,425億円
売上高成長率(前期比)+10.4%+7.6%+6.4%
収益性
営業利益(経常利益)5,958億円1,838億円1,906億円
営業利益率(経常利益率)51.0%21.4%22.6%
当期純利益4,452億円1,665億円1,673億円
Return On Equityの略。株主が出した資本(自己資本)に対して、企業がどれだけ効率的に利益を生み出したかを示す指標です。当期純利益÷自己資本で算出します。詳しくはこちら →12.8%8.9%7.9%
Return on Assetsの略。負債も含めた総資産全体に対して、企業がどれだけ効率的に利益を生み出したかを示す指標です。当期純利益÷総資産で算出します。詳しくはこちら →12.1%8.0%7.2%
EPS(1株当たり利益)1835.63円178.47円2640.04円
財務健全性
総資産のうち、返済不要の自己資本(株主資本)がどれだけの割合を占めるかを示す指標。数字が高いほど負債への依存度が低く、財務的な余力が大きいとされます。詳しくはこちら →94.6%89.2%91.5%
BPS(1株当たり純資産)14313.86円1998.45円33498.92円
現金及び現金同等物4,513億円6,151億円5,738億円
有利子負債0億円0億円51億円
ネットキャッシュ4,513億円6,151億円5,687億円
市場評価
1株配当(会社予想)550円107円1000円
株価87380.0円6460.0円75790.0円
Price Earnings Ratioの略。株価が1株あたり利益(EPS)の何倍まで買われているかを示す指標で、株価が利益水準に対して割高か割安かの目安として使われます。詳しくはこちら →44.10倍32.60倍27.90倍
PBR(実績)6.10倍3.23倍2.26倍
配当利回り(会社予想)0.63%1.66%1.32%
時価総額211,918億円60,282億円48,407億円
時価総額を売上高で割った倍率(PSR=Price to Sales Ratioとも呼ばれます)。利益がマイナスでPERが算出できない赤字企業でも、売上高さえあれば算出できる株価指標です。詳しくはこちら →18.12倍7.03倍5.75倍

決算数値の算出基準: 2026年4月24日〜5月14日発表の2026年3月期決算短信/株価・PER・PBR・配当利回り・時価総額の基準: 2026年8月6日時点

精密機器・FA機器業界のビジネスモデルと財務構造

FA(ファクトリーオートメーション)機器メーカーは、工場の自動化に欠かせないセンサー・計測機器(キーエンス)、工作機械の頭脳であるCNC装置や産業用ロボット(ファナック)、空気圧で機械を動かす空圧制御機器(SMC)などを、世界中の製造業に供給しています。いずれも特定分野で世界トップクラスのシェアを持ち、価格競争に巻き込まれにくい点が共通しています。

キーエンスは自社工場を持たず生産を外部に委託する「ファブレス」と、代理店を通さない直販で知られ、顧客の課題を解決する提案型営業によって高い粗利を確保しています。ファナック・SMCは自社で大規模な生産設備を持ちつつ、製品の標準化と量産で高い利益率を実現しています。

財務面の最大の特徴は、自己資本比率が90%前後で、借入にほとんど頼らないことです。稼いだ利益を内部に蓄積してきたため手元資金が厚く、景気後退期でも財務が揺らぎにくい一方、純資産が大きい分だけROEは利益率の高さほどには高く出ません。設備投資需要に連動するため業績自体は景気の影響を受けやすく、受注動向が株価に先行して影響します。

精密機器・FA機器業界で注目したい指標の読み方

営業利益率
製造業全体では10%を超えれば高収益とされますが、この3社は20%超、キーエンスは50%超と桁違いの水準です。競争優位(シェア・技術・営業モデル)の強さを測る指標として読み、前期比でどれだけ維持できているかに注目します。
ROEとROAの差
自己資本比率が90%前後のため、ROEとROAがほぼ同じ値になります。ROEが他業界より低めに見えても、それは借入を使っていないためで、稼ぐ力が弱いわけではありません。資本効率を議論するときは、厚い手元資金を株主還元や成長投資にどう振り向けるかが論点になります。
PER・PSR
高い利益率と成長期待から、PERは20倍台後半〜40倍台、PSR(売上高倍率)は5〜18倍と他業界より大幅に高く評価されています。期待が高い分、受注の減速や利益率の低下が見えると株価が大きく調整しやすい点に注意が必要です。

3社の比較から読み取れること(運営者の見解)

  1. キーエンスの営業利益率51.0%は別格

    キーエンスの営業利益率は51.0%で、ファナック(21.4%)・SMC(22.6%)の2倍以上です。ROAも12.1%と3社で最も高く、ファブレス・直販という事業モデルの強さが財務数値にそのまま表れています。市場もこれを評価し、PERは44.1倍、PSRは18.12倍と3社で最も高い評価です。

  2. 3社とも実質無借金、ROEは8〜13%

    自己資本比率は89.2%〜94.6%、ネットキャッシュは3社とも4,500億円以上のプラスです。利益率は高いにもかかわらずROEは7.9%(SMC)〜12.8%(キーエンス)にとどまり、ROEの高さが財務レバレッジで押し上げられている不動産・通信業界とは対照的な構造です。

  3. 配当利回りは1%台以下と低め

    配当利回りは0.63%(キーエンス)〜1.66%(ファナック)と、他業界と比べて低水準です。株価水準が高いことに加え、利益の多くを内部留保に回してきたためで、インカムより成長を重視する投資家向けの業界といえます。

  4. 3社とも増収、設備投資需要の回復を反映

    売上高はキーエンス+10.4%、ファナック+7.6%、SMC+6.4%と3社とも増収でした。FA機器は製造業の設備投資に先行して動くため、今後も受注・売上の伸び率が株価を左右する最重要の指標になると考えられます。

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※上記は掲載データをもとにした運営者の見解であり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。

会社概要・会計基準

キーエンス(6861)

日本基準

2026年3月期(通期、2025年3月21日〜2026年3月20日)

キーエンス 2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結) →

ファナック(6954)

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ファナック 2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結) →

SMC(6273)

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2026年3月期(通期、2025年4月1日〜2026年3月31日)

SMC 2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結) →

算出方法・データソース

※本ツールは各社の決算短信に基づく財務指標を業界内で相対比較する情報提供を目的としており、投資助言・売買推奨ではありません。特定の企業への投資を推奨するものではなく、投資判断はご自身の責任で行ってください。数値は算出時点のものであり、最新の情報は各社のIR資料でご確認ください。