更新日: 2026年10月10日

株式分割とは

1株を2株・3株などに分けて、発行済み株式数を増やすこと。株価や1株あたりの利益・配当は分割比率に応じて小さくなりますが、会社の価値や株主が持つ資産の総額は変わりません。

かみ砕いた説明

株式分割は、会社が1株をいくつかの株に分けることです。たとえば「1株→3株」の分割では、100株を持っていた株主は300株を持つことになります。その代わり、理論上の株価は3分の1になるため、持っている株の評価額の合計は分割の前後で変わりません。

ピザを3等分しても、ピザ全体の大きさは変わらないのと同じです。会社の利益や純資産も変わらないため、株式分割そのもので株主が得をしたり損をしたりすることはありません。

会社が株式分割をする主な目的は、1株あたりの株価を下げて、個人投資家が買いやすくすることです。日本株は通常100株単位で売買するため、株価が6,000円なら最低60万円が必要ですが、1株→3株に分割すれば約20万円から買えるようになります。買い手が増えれば売買が活発になり、出来高が増えることも期待できます。

計算例:分割で何が変わり、何が変わらないか

中央自動車工業(8117)は2025年3月28日に1株→3株の株式分割を行いました。分割後の数値(2026年10月10日時点の株価1,991円、今期予想EPS 172円)を、分割前の株数ベースに戻すと次のようになります。

項目分割前の株数ベース分割後の株数ベース変化
株価5,973円1,991円3分の1
1株あたり利益(EPS)516円172円3分の1
1株あたり配当(今期予想)189円63円3分の1
PER11.6倍11.6倍変わらない
配当利回り3.2%3.2%変わらない

株価・EPS・配当といった「1株あたり」の数値はすべて同じ比率で小さくなるため、それらの割り算で求めるPER・PBR・配当利回りは変わりません。時価総額や利益の総額も同じです。

分割前後のデータを混ぜると指標が大きく狂う

株式分割で最も注意したいのは、分割後の株価と、分割前の1株あたりの数値を組み合わせてしまうことです。上の例で、分割後の株価1,991円を分割前のEPS 516円で割ると、PERは約3.9倍となり、実際の11.6倍とはまったく違う「異常に割安」な数値が出てしまいます。配当利回りも同様に、分割前の配当189円を分割後の株価で割ると約9.5%という非現実的な値になります。

データ提供元によっては、分割の直後しばらく、株価は分割後なのに1株利益や配当は分割前の値のまま、という期間が生じることがあります。中央自動車工業の分析記事では、分割の前後でこの混在がある期間があったため、分割比率で補正したうえで過去2年のPERレンジを計算しています。

実際の株式分割の例

当サイトで取り上げた会社の株式分割には、次のようなものがあります。

会社実施日分割比率
中央自動車工業2025年3月28日1株→3株
IHI2025年10月1日1株→7株
ワールド2026年3月1日1株→2株
川崎重工業2026年4月1日1株→5株

防衛関連3社の比較では、川崎重工とIHIの分割前後の1株あたり指標をすべて分割後の株数ベースに換算して比較しています。ワールド(3612)の個別株分析では、分割をはさんだ株価チャートを読むときの注意点を紹介しています。

よくある誤解・注意点

  • 「株価が下がった」わけではない: 分割で株価が3分の1になっても、持ち株数が3倍になっているので資産は減っていません。過去のニュース記事の株価や、調整前の生データと比べるときは特に注意が必要です
  • 配当の推移は分割後の株数ベースにそろえて比べる: 1株→3株の分割をはさんで「1株配当が150円から50円に減った」ように見えても、分割比率で換算すれば減配ではありません。増配かどうかは、同じ株数ベースにそろえてから判断します
  • 分割の発表で株価が上がることはあるが、価値が増えたわけではない: 買いやすくなることへの期待や、会社の自信の表れと受け止められて株価が上がることはありますが、会社の利益や資産が増えたわけではありません。分割だけを理由に買うのは避けたいところです
  • 証券会社のチャートは通常「調整後株価」: 多くのチャートは過去の株価を分割比率で割り戻して表示しているため、分割による段差は見えません。一方、生の株価データや当時のニュースの数値は調整されていないため、混ぜて比べないようにしましょう