積立投資のシミュレーションで「平均リターン」だけを見てはいけない理由

ポートフォリオ理論新NISAモンテカルロ法

新NISAが始まってから、「毎月〇万円を年率5%で20年積み立てたらいくらになるか」というシミュレーションを目にする機会が増えました。多くの積立シミュレーターは、この「年率5%」を毎年きっちり得られるものとして複利計算をします。

しかし、実際の株式市場のリターンは年によって大きくばらつきます。ある年は+25%、翌年は-15%、というように変動しながら、長期的に見て平均5%程度に落ち着く、というのが実態に近いイメージです。この「ばらつき」を無視した単純な複利計算では、資産形成の実態を正しく捉えられません。

平均リターンでの単純計算の問題点

年率5%固定で20年間、毎月3万円を積み立てた場合の将来価値は、複利計算で一意に決まります。しかしこれは「ありえたかもしれない未来」のうちの、あくまで平均的な1本の道筋にすぎません。

実際には同じ「期待リターン5%・リスク(標準偏差)15%」という前提でも、市場の値動き次第で最終的な資産額は大きく変わり得ます。運が良ければ平均を大きく上回り、運が悪ければ元本割れに近い着地もあり得ます。この「幅」を把握しないまま将来設計をすることは、リスクを過小評価することにつながります。

モンテカルロ・シミュレーションという考え方

金融工学では、こうした不確実性を扱うためにモンテカルロ・シミュレーションという手法がよく使われます。考え方はシンプルです。

  1. 期待リターンとリスク(標準偏差)を仮定する
  2. その前提のもとで、ランダムな値動きのシナリオを何千パターンも生成する
  3. 各シナリオでの最終的な資産額を集計し、中央値や上位10%・下位10%といった分布として結果を見る

これにより、「平均するとこうなる」ではなく「最終的な資産額はこのくらいの範囲に収まる可能性が高い」という、より実態に近い形でリスクを可視化できます。

実際に試してみる

言葉で説明するよりも、実際に数字を動かしてみる方が理解が早いはずです。当サイトの「積立シミュレーター」では、毎月の積立額・期待リターン・リスク(変動の大きさ)を入力すると、モンテカルロ法によるシナリオを試算し、資産額の分布(中央値と10〜90%レンジ)をグラフで確認できます。

同じ期待リターンでも、リスク(標準偏差)を大きくすると、中央値はあまり変わらなくても上下のレンジが大きく広がることが体感できるはずです。これが「リスク」という言葉の金融工学的な意味です。

まとめ

  • 積立シミュレーションの「年率〇%」は、あくまで平均的な仮定にすぎない
  • 実際のリターンは年によってばらつくため、最終的な資産額にも幅が生じる
  • モンテカルロ・シミュレーションを使うと、この「幅」を定量的に把握できる
  • リスクを取ることは「振れ幅を受け入れること」であり、シミュレーションで体感しておくことが長期投資を続ける上での心構えになる

シミュレーションの前提となっている「リスク(標準偏差)」や、複数の資産を組み合わせたときに効いてくる「相関係数」については、標準偏差とは何か?資産運用の「リスク」を数字で理解する相関係数を味方につける:分散投資が「効く」仕組みを金融工学で解説で、それぞれ詳しく解説しています。

次回は、複数資産を組み合わせたときにリスクがどう変化するか(分散投資の効果)について解説する予定です。