標準偏差とは何か?資産運用の「リスク」を数字で理解する

標準偏差リスク金融工学

投資の世界で「リスク」という言葉は、日常的には「損をする可能性」という意味で使われがちです。しかし金融工学では、リスクはもっと具体的に「リターンの振れ幅(ばらつき)」として定義され、標準偏差という一つの数字で表されます。この記事で扱う数字は、これまでの記事でも繰り返し登場している考え方の土台になるものです。

標準偏差とは、平均からの散らばり具合

標準偏差は、ある数値の集まりが平均値からどれくらい散らばっているかを表す統計量です。投資でいえば、「毎年のリターンが、期待リターン(平均的なリターン)からどれくらいブレるか」を表します。

たとえば、ある資産の期待リターンが年5%だとします。標準偏差が小さければ、実際のリターンは毎年5%前後で比較的安定します。標準偏差が大きければ、ある年は+25%、翌年は-15%というように、大きく上下にブレながら平均すると5%に近づく、というイメージになります。同じ「期待リターン5%」でも、この振れ幅の大きさによって、投資の実感はまったく違うものになります。

正規分布と「1標準偏差・2標準偏差」ルール

リターンのばらつきが正規分布(釣鐘型の分布)に近いと仮定すると、標準偏差を使って次のようなおおまかな目安を計算できます。

  • 期待リターン ± 標準偏差(1標準偏差)の範囲に、約68%の確率で収まる
  • 期待リターン ± 標準偏差 × 2(2標準偏差)の範囲に、約95%の確率で収まる

たとえば期待リターン5%・標準偏差15%の資産であれば、1年後のリターンはおおよそ68%の確率で-10%〜+20%の範囲に収まり、95%の確率で-25%〜+35%の範囲に収まる、という見方ができます。この考え方は、新NISAのつみたて投資、何%の下落まで許容できるか自分で試算する方法で、実際の下落幅を見積もる際にも使っています。

ただし実際の株式リターンは、完全な正規分布よりも裾が厚く、大きな下落がやや起こりやすい分布になることが知られています。この点を踏まえたより実態に近い試算には、モンテカルロ・シミュレーションのような手法が有効です。

実際の資産クラスで標準偏差を比較する

ポートフォリオ比較ページで使っている想定値を例に、資産クラスごとの標準偏差を比べてみます。

資産クラス 期待リターン 標準偏差(リスク)
国内株式 5.0% 20.0%
外国株式 5.5% 18.0%
全世界株式(単一指数として) 5.0% 15.0%
外国債券 2.0% 9.0%
世界債券 1.8% 6.0%
国内債券 1.0% 3.0%

株式は債券に比べて期待リターンが高い一方、標準偏差(リスク)も明らかに大きいことがわかります。特に国内株式は標準偏差20%と、この中では最もばらつきが大きい資産クラスです。「期待リターンが高い資産ほど、値動きも大きい」という金融工学の基本的な関係が、こうして数字で確認できます。

標準偏差だけでは判断できないこと

標準偏差はリスクの大きさを表しますが、それ単体では「良い投資か悪い投資か」を判断できません。標準偏差が同じでも期待リターンが異なれば、リスクに見合った見返りがあるかどうかはまったく違ってきます。また、複数の資産を組み合わせたポートフォリオ全体の標準偏差は、個々の資産の標準偏差を単純に平均しただけでは求まりません。ここで効いてくるのが相関係数という、もう一つの重要な指標です。この関係については、相関係数を味方につける:分散投資が「効く」仕組みを金融工学で解説で詳しく解説します。

まとめ

  • 標準偏差は、リターンの「振れ幅(ばらつき)」を数値化したもので、金融工学における「リスク」の基本的な定義である
  • 正規分布を仮定すると、期待リターン±標準偏差の範囲に約68%、±2標準偏差の範囲に約95%の確率でリターンが収まるという目安が使える
  • 一般に期待リターンが高い資産クラスほど、標準偏差(リスク)も大きくなる傾向がある
  • 標準偏差だけでは投資の良し悪しは判断できず、期待リターンや資産同士の相関とあわせて見る必要がある