更新日: 2026年10月5日

資本配分線(CAL)/2ファンド分離定理とは

現金(無リスク資産)とリスク資産を組み合わせて、ポートフォリオ全体の値動きの大きさを線形に調整できるとする理論。「2ファンド分離定理」とも呼ばれます。

かみ砕いた説明

資本配分線(Capital Allocation Line、CAL)は、現金などの無リスク資産とリスク資産を組み合わせたときに、ポートフォリオ全体の期待リターンとリスク(標準偏差)がどう変わるかを表す直線です。

この考え方の核心は、「どのリスク資産を持つか」と「リスク資産と現金をどんな割合で持つか」という2つの意思決定を切り分けて考えられるという点にあります。まず最適なリスク資産の組み合わせを1つ決め、あとは自分のリスク許容度に合わせて、それと現金の比率だけを調整すればよい。2つの「ファンド」(無リスク資産とリスク資産)さえあれば、どんなリスク水準のポートフォリオでも作れるという意味で「2ファンド分離定理」、提唱者の名前から「トービンの分離定理」とも呼ばれます。

計算式

投資資金のうち、リスク資産に w の割合、無リスク資産(現金)に 1 − w の割合を配分するとします。リスク資産の期待リターンを E、標準偏差を σ、無リスク資産の利回りを rf とすると、

  • ポートフォリオの期待リターン = rf + w ×(E − rf)
  • ポートフォリオの標準偏差 = w × σ

無リスク資産は値動きがない(標準偏差0)ため、ポートフォリオ全体の標準偏差はリスク資産の比率 w にそのまま比例します。リスク資産を半分にすれば、値動きの大きさもちょうど半分になるということです。横軸に標準偏差、縦軸に期待リターンを取ると、この組み合わせは一直線に並びます。これが資本配分線です。

直線の傾き(E − rf)÷ σ は「リスク1単位あたりの超過リターン」を表し、シャープレシオと呼ばれます。傾きが急なリスク資産ほど、同じリスクで高いリターンを得られる効率的な資産ということになります。

計算例:オルカンと現金を組み合わせる

当サイトのポートフォリオ比較では、全世界株式(オルカン想定)の期待リターンを年5.0%、標準偏差を年15.0%と想定しています。説明を簡単にするため現金の利回りを0%とすると、現金との組み合わせは次のようになります。

リスク資産の比率 w現金の比率期待リターン標準偏差
100%0%5.0%15.0%
80%20%4.0%12.0%
60%40%3.0%9.0%
40%60%2.0%6.0%

w を下げるほど、期待リターンと標準偏差が同じ比率で小さくなっていくことが分かります。

分散投資の効果は「傾き」の違いに表れる

同じく当サイトが想定している「株式60%・債券40%」のポートフォリオは、期待リターン3.72%・標準偏差約9.7%です。一方、上のオルカンと現金の組み合わせで標準偏差を同じ約9.7%にそろえると(w ≒ 64%)、期待リターンは約3.2%にとどまります。

ポートフォリオ期待リターン標準偏差傾き(現金利回り0%の場合)
全世界株式100%5.0%15.0%0.33
GPIF基本ポートフォリオ型(4資産均等)3.4%約9.4%0.36
株式60%・債券40%3.7%約9.7%0.39

同じリスク水準なら、株式と債券を組み合わせた方が、株式と現金を組み合わせるより高い期待リターンが得られる計算です。株式と債券の相関係数が低い(このモデルでは0.15)ため、組み合わせることで値動きが打ち消し合い、リスクあたりのリターン(傾き)が改善しているのです。資本配分線の考え方に従えば、まず傾きが最も急になるリスク資産の組み合わせを探し、そのうえで現金比率でリスクの大きさを調整するのが理論上の最適解になります。

※期待リターン・標準偏差は当サイトのシミュレーション用の想定値であり、将来の運用成果を示すものではありません。

現金比率の決め方への応用

この理論を実生活に応用すると、「投資資金のうちどれだけを現金で持つべきか」を数字で考えられます。現金比率シミュレーターでは、ポートフォリオの1σ下落幅の目安(標準偏差 − 期待リターン)と、自分が許容できる下落幅の比率からリスク資産の比率 w を逆算しています。

たとえばオルカン想定(1σ下落幅の目安は15.0% − 5.0% = 10.0%)で、許容できる下落幅が8%なら、w = 8% ÷ 10% = 80%、つまり投資資金の20%を現金として持つという結果になります。詳しい使い方は現金比率シミュレーターの使い方で解説しています。

よくある誤解・注意点

  • 「現金を増やす=損」ではない: 現金比率を上げると期待リターンは下がりますが、それはリスクを下げた分の対価です。自分が耐えられない値動きのポートフォリオを持ち、暴落時に狼狽売りしてしまう方が、長期的な損失は大きくなりがちです
  • 現実の暴落では理論どおりにならない: 標準偏差は正規分布を前提にした平均的なばらつきの目安で、実際の暴落では1σを大きく超える下落(ドローダウン)が起こることがあります
  • 生活防衛資金とは別に考える: ここでの「現金」は投資資金の中の配分の話です。生活費の数ヶ月分を確保する生活防衛資金は、投資とは別枠で用意しておくのが一般的です