更新日: 2026年10月5日

持分法による投資損益とは

出資先企業(子会社ほど支配力は強くないが一定の影響力を持つ関連会社等)の利益のうち、出資比率に応じた持分相当額を自社の損益として計上する会計項目。商社など出資先企業からの収益に大きく依存する業界で、利益の内訳を理解する上で重要な指標です。

かみ砕いた説明

持分法による投資損益とは、自社が一定の影響力を持つ出資先企業(関連会社・共同支配企業)が稼いだ利益のうち、自社の出資比率に応じた取り分を、自社の連結損益計算書に計上する会計項目です。出資先が赤字なら、その持分相当の損失が計上されます。

ポイントは、出資先の売上高や費用は自社の決算に取り込まず、最終的な利益の取り分だけを1行で取り込むことです。このため、持分法による投資損益は売上高や営業利益には表れず、営業利益より下の段階で利益に加わります。

出資比率による会計処理の違い

出資先をどう決算に取り込むかは、原則として出資比率(議決権の割合)と影響力の強さで決まります。

出資比率の目安出資先の区分自社決算への取り込み方
50%超連結子会社売上高・費用・資産・負債をすべて合算(他の株主の取り分は非支配株主持分として区別)
20%〜50%程度関連会社(持分法適用会社)利益の持分相当額だけを「持分法による投資損益」として計上
20%未満その他の投資先受け取った配当を損益に計上(保有株式の時価の変動は、多くの場合、損益ではなく純資産の評価差額として計上)

実際には、出資比率が20%未満でも役員の派遣などで重要な影響力を持っていれば持分法が適用されることがあり、比率はあくまで目安です。

決算書のどこに載っているか

日本基準の損益計算書では「営業外収益(損失の場合は営業外費用)」の中に、IFRSの損益計算書では金融収益・費用の後、税引前利益の手前に独立した1行として表示されるのが一般的です。いずれの場合も、売上高や営業利益の段階には含まれません。

計算例

出資比率30%の関連会社が、その期に当期純利益100億円を計上したとします。

  • 自社が計上する持分法による投資損益: 100億円 × 30% = 30億円
  • 関連会社の売上高が1,000億円あっても、自社の売上高には1円も加算されない
  • 関連会社から10億円の配当を受け取っても、それは利益の二重計上を避けるため損益には計上せず、投資簿価の減額として処理する

つまり持分法では、配当として現金を受け取ったかどうかに関係なく、出資先が稼いだ利益の取り分がその期の利益に反映されます。

5大商社の実際の数値

持分法による投資損益が特に大きな意味を持つのが総合商社です。商社は自ら商品を売買する「トレーディング」だけでなく、資源開発・電力インフラ・食品・小売など幅広い分野の企業に出資し、その出資先が稼ぐ利益の分け前を得る「事業投資」を収益の柱にしています。

当サイトの商社業界トップ5 財務諸表比較ツールでは、2026年3月期決算について、当期純利益に占める持分法による投資損益の割合(投資収益比率)を算出しています。

会社持分法による投資損益当期純利益投資収益比率
丸紅3,383億円5,439億円62.2%
三菱商事4,679億円8,005億円58.5%
三井物産4,474億円8,340億円53.7%
住友商事2,667億円6,003億円44.4%
伊藤忠商事3,235億円9,003億円35.9%

丸紅・三菱商事・三井物産は当期純利益の半分以上を持分法による投資損益が占め、出資先企業からの利益の取り分が稼ぎの中心になっていることが分かります。一方、伊藤忠商事は35.9%と5社で最も低く、連結子会社として取り込んでいる事業(売上高・営業利益に表れる部分)の比重が相対的に大きい会社だと読み取れます。同じ「総合商社」でも、どのような形で事業に関わって稼いでいるかに違いがあるわけです。

営業利益率だけで商社を判断すると見誤る

商社の決算では「営業利益率は低いのに当期純利益は大きい」という一見不思議な状態がよく見られます。たとえば伊藤忠商事の営業利益率は4.7%、丸紅は3.1%と、精密機器業界(3社平均で約32%)などと比べると非常に低い水準です。しかし、営業利益の下で持分法による投資損益が大きく加わるため、ROEは伊藤忠商事13.6%、丸紅12.4%と、業界をまたいでも見劣りしない水準になっています。

営業利益率だけを見て「商社は儲からない業界」と判断すると、出資先企業からの投資収益という商社ならではの稼ぎ方を見落としてしまいます。なお、三菱商事・三井物産・住友商事はIFRSの損益計算書に営業利益に相当する科目自体がないため、当サイトのツールでは営業利益率を「算出不可」としています。

よくある誤解・注意点

  • 持分法による投資損益は現金収入ではない: 計上された利益のうち、実際に現金として入ってくるのは出資先から受け取る配当だけです。利益とキャッシュフローの差は、キャッシュフロー計算書で確認できます
  • 出資先の業績変動をそのまま受ける: 資源価格の下落などで出資先が減損損失を出すと、持分法による投資損益が大きく落ち込むことがあります。比率が高い会社ほど、出資先の業績の影響を受けやすくなります
  • 「持分法投資利益」「持分法による投資利益」とも表記される: 決算資料によって呼び方が少しずつ異なりますが、指している内容は同じです