更新日: 2026年10月5日
ドローダウン(最大下落率)とは
資産価格が過去の最高値から、その後の最安値までどれだけ下落したかを示す割合。暴落局面で実際にどれだけ資産が目減りしたかを測る指標です。
かみ砕いた説明
ドローダウンは、ある資産の価格(またはポートフォリオの評価額)が、それまでの最高値からどれだけ下落したかを示す割合です。対象期間の中で最も大きかった下落を「最大ドローダウン(MDD、Maximum Drawdown)」と呼びます。
標準偏差が「平常時も含めた値動き全体のばらつき」を表すのに対し、ドローダウンは「実際に高値から底までどれだけ資産が目減りしたか」という、投資家が体感する痛みに近い形でリスクを表します。「この資産は過去の最悪期に何%下がったか」を知ることで、自分がその下落に耐えられるかを具体的にイメージしやすくなります。
計算式と計算例
ドローダウン =(ある時点の価格 - それまでの最高値)÷ それまでの最高値
たとえば、ある投資信託の基準価額が10,000円まで上昇した後、6,000円まで下落し、その後8,000円まで戻したとします。
- 6,000円の時点のドローダウン: (6,000 - 10,000)÷ 10,000 = -40%(これが最大ドローダウン)
- 8,000円の時点のドローダウン: (8,000 - 10,000)÷ 10,000 = -20%(まだ高値を回復していない)
ドローダウンは、価格が過去の最高値を更新するまでマイナスのまま続きます。高値から底までの期間と、底から高値を回復するまでの期間を合わせた「ドローダウン期間」も、投資家の忍耐力を試す重要な情報です。
下落率と回復に必要な上昇率は対称ではない
ドローダウンを考えるうえで知っておきたいのが、下落した分を取り戻すには、下落率より大きな上昇率が必要になるという点です。
| ドローダウン | 元の水準に戻るために必要な上昇率 |
|---|---|
| -10% | +11.1% |
| -20% | +25.0% |
| -30% | +42.9% |
| -50% | +100.0% |
| -60% | +150.0% |
計算式は「1 ÷(1 + ドローダウン)- 1」です。リーマンショック期に日経平均は月次終値ベースで47.2%下落しました(2008年3月以降の高値から。2007年の高値からは約58%の下落)が、47.2%の下落を取り戻すだけでも約89%の上昇が必要になります。大きなドローダウンを避けることが長期の資産形成で重視されるのは、この非対称性があるためです。
実際の暴落局面でのドローダウン
当サイトの暴落プレイバックでは、2つの暴落局面における主要資産とTOPIX-17業種(の連動ETF)の最大ドローダウンを、月次終値から算出しています。集計期間はリーマンショックが2008年3月〜2009年4月、コロナショックが2019年10月〜2020年5月の範囲内です(業種ETFのデータが取得できる期間にそろえているため、リーマンショックの日経平均は2007年の高値からの下落率(約-58%)より小さく出ています)。
| 資産 | リーマンショック | コロナショック |
|---|---|---|
| 日経平均 | -47.2% | -20.0% |
| S&P500 | -47.5% | -20.0% |
| 金(ドル建て) | -21.8% | -3.0%※ |
| 不動産(業種) | -64.6% | -28.9% |
| 鉄鋼・非鉄(業種) | -58.0% | -33.9% |
| 電気・ガス(業種) | -21.0% | -12.8% |
| 医薬品(業種) | -34.0% | -10.7% |
※金のコロナショック期の下落(2019年10月→11月)は、集計期間内の最大下落を機械的に拾ったもので、2020年2〜3月の暴落時の下落ではありません。
同じ暴落でも、業種によって下落率に3倍以上の差があります。不動産や鉄鋼・非鉄のように景気の影響を受けやすい業種(景気敏感株)は日経平均以上に下落し、電気・ガスや医薬品のようなディフェンシブ株は下落が小さく抑えられました。金はどちらの局面でも株式より下落が小さく、株式と組み合わせる資産としての性質がうかがえます。
業種別 景気感応度マップでは、各業種のドローダウンを日経平均のドローダウンで割った「相対ドローダウン」(1を超えると日経平均より大きく下落)を、景気敏感度を分類する指標の一つとして使っています。
現金と組み合わせたときのドローダウン
ポートフォリオの一部を現金で持つと、ドローダウンはおおむね株式の比率に比例して小さくなります。リーマンショック時の日経平均(-47.2%)を例にすると、株式60%・現金40%のポートフォリオなら、下落時に株式部分だけが目減りするため、全体のドローダウンはおよそ 47.2% × 60% ≒ 28%にとどまる計算です(期間中のリバランスや配当は考慮しない概算)。現金とリスク資産の比率で値動きの大きさを調整するという考え方は、資本配分線(2ファンド分離定理)で詳しく解説しています。
標準偏差・ベータ値との違い
- 標準偏差: 平常時を含めた値動き全体のばらつき。正規分布を前提にすると、年率リターンのおよそ68%が「期待リターン±1標準偏差」の範囲に収まり、それを下回る年はおよそ6年に1回という目安になりますが、実際の暴落はその想定を超えることがあります
- ベータ値: 市場全体(指数)が1%動いたときに、その資産が平均して何%動くかという平時の連動性
- ドローダウン: 特定の期間・特定の暴落で実際に起きた最大の下落という「実績」
平時のベータが低くても、特定の暴落では大きく下落した、ということもあり得ます。複数の指標を組み合わせることで、資産のリスクを立体的に把握できます。
よくある誤解・注意点
- 過去の最大ドローダウンは「将来の最大」ではない: 過去のデータで計算した数字なので、将来それを上回る下落が起きる可能性は常にあります
- 計測に使うデータの頻度で値が変わる: 当サイトの数値は月次終値ベースです。日次の終値で計算すると、月中の安値を拾うため、より大きなドローダウンになるのが一般的です
- 積立投資では体感が異なる: 毎月積み立てている場合、ポートフォリオ全体のドローダウンは、一括投資した場合とは異なる推移になります。自分がどの程度の下落まで耐えられるかは、新NISAのつみたて投資の下落許容度を試算する記事で詳しく扱っています