積立シミュレーター(モンテカルロ法)の使い方と数字の読み方

ツール解説モンテカルロ法積立投資

当サイトの積立シミュレーターは、毎月の積立額やポートフォリオ構成を入力するだけで、将来の資産額を単純な複利計算の一点予測ではなく、1,500パターンのモンテカルロ・シミュレーションによる「分布」として試算するツールです。計算の考え方そのものはこちらの記事で解説しているので、本記事では入力項目と、出てきた数字・グラフの読み方に絞って説明します。

入力できる項目

  • ポートフォリオ構成: ポートフォリオ比較ページと同じ4種類の代表的な資産配分(全世界株式インデックス、株式60%・債券40%、GPIF基本ポートフォリオ、オールウェザー・ポートフォリオ。詳しくはポートフォリオ比較ツールの解説記事を参照)から選択します。選ぶと、その配分に応じた期待リターン・標準偏差と、資産ごとの配分金額が自動で表示されます
  • 初期投資額: シミュレーション開始時点で、すでに保有している金額
  • 毎月積立額: 新NISAのつみたて投資枠などで、毎月積み立てる金額
  • 積立期間: 1〜40年の範囲でスライダーにより指定

出力される4つの数字

シミュレーション結果は、4つの数値タイルで表示されます。

  • 積立元本合計: 単純に「これまでに投じたお金の合計」。運用による増減を含まない基準線です
  • 中央値(50%タイル): 1,500パターンのシミュレーション結果を小さい順に並べたとき、ちょうど真ん中に来る値。「まあまあありそうな結果」の目安です。なお、対数正規分布を仮定した計算では中央値は算術平均よりやや小さくなる性質があります
  • 下位10%タイル: 1,500パターン中、下から約150番目に位置する値。「10回に1回はこれより悪い結果もありえる」という下振れの目安です
  • 上位90%タイル: 逆に「10回に1回はこれより良い結果もありえる」という上振れの目安です

グラフの読み方

グラフには3つの要素が重なって表示されます。

  • 帯(バンド): 下位10%タイル〜上位90%タイルのレンジ
  • 実線(アクセントカラー): 中央値の推移
  • もう1本の線: 積立元本の推移

グラフにカーソルを合わせると、その年の中央値・レンジ・元本をツールチップで確認できます。また「表で見る」ボタンを押すと、年ごとの数値を一覧表示できます。

実際に試算してみる

例として、全世界株式インデックス・初期投資0円・毎月3万円・積立期間20年というシナリオで試算した結果は次のようになります(モンテカルロ法によるランダムな計算のため、実際に自分でツールを実行すると多少異なる数字になります)。

経過年数 積立元本 下位10%タイル 中央値 上位90%タイル
5年 180万円 156万円 200万円 261万円
10年 360万円 311万円 447万円 652万円
15年 540万円 478万円 745万円 1,203万円
20年 720万円 660万円 1,112万円 1,969万円

この表からいくつか読み取れることがあります。

  1. 元本に対する中央値の伸びは、年数が経つほど大きくなる。 5年目時点では元本180万円に対し中央値200万円とまだ差は小さいですが、20年目には元本720万円に対し中央値1,112万円と、複利の効果が積立後半になるほど大きく効いてきます
  2. 下位10%〜上位90%の「幅」は、年数とともに絶対額としては大きく広がる。 20年目には下位10%(660万円)と上位90%(1,969万円)の差が1,300万円以上に達します。年数が経つほど、割合としてのブレは縮小する傾向がある一方、金額としてのブレは拡大していきます
  3. 注目したいのは、20年経っても下位10%タイル(660万円)が積立元本(720万円)を上回っていないことです。 期待リターン5%というプラスの前提を置いていても、「20年間コツコツ積み立てたのに、着地額が投じた金額を下回る」可能性が理論上10回に1回程度は残っている、ということです。これは「長期投資すれば必ず増える」という単純な思い込みに対する重要な反証になります

株式100%のポートフォリオでこの傾向をどこまで許容できるかは、何%の下落まで許容できるか自分で試算する方法で詳しく扱っています。

数字を読むときの注意点

  • 中央値・10%・90%タイルは、1,500パターンのランダムなシナリオから計算した統計値です。乱数を使っているため、シミュレーションを実行するたびに多少数字が変動します。厳密な予測値ではなく、傾向を掴むための目安として使ってください
  • 対数正規分布を仮定した計算のため、実際の市場で起きる急落時の分布の歪み(暴落時に相関が急上昇する現象など)までは再現していません
  • 期待リターン・標準偏差の前提は、ポートフォリオ比較ページに掲載している資産クラスごとの想定値に基づく仮定であり、将来の市場環境によって変わりえます

まとめ

  • 積立シミュレーターは、将来の資産額を一点の予測ではなく「中央値」と「10〜90%タイルのレンジ」という分布で示すツールである
  • 積立元本合計は基準線、中央値は「ありそうな結果」、下位10%・上位90%タイルはそれぞれ下振れ・上振れの目安として読む
  • グラフの帯の幅は、年数が経つほど絶対額としては広がっていく点に注意する
  • 期待リターンがプラスでも、下位10%タイルが元本を下回り続けるケースがあることを、実際の試算例から確認できる