日経平均はTOPIXより台湾・韓国株と連動する? 直近1〜3年で相関が「逆転」した理由

市場分析相関係数半導体

「同じ日本株市場の指数であるTOPIXよりも、台湾や韓国の株価指数の方が日経平均と連動している」——相関ヒートマップ(日経平均)の「他の株式指数と比較」タブで直近1年のデータを見ると、こんな一見不自然な結果が出てきます。本記事では、この逆転現象がなぜ起きているのかを、指数の構成方法と足元の相場環境の両面から分析します。

データで見る「意外な結果」

日経平均を基準にした、TOPIX・台湾加権指数・韓国KOSPIとの相関係数(月次リターンのピアソン相関係数)は、期間別に次のようになっています。

比較先 1年 3年 5年 10年
TOPIX 0.74 0.81 0.86 0.89
台湾加権指数 0.92 0.85 0.75 0.69
韓国KOSPI 0.90 0.82 0.80 0.76

普通に考えれば、同じ日本市場を時価総額加重で見ているTOPIXが、日経平均と最も近い動きをしそうなものです。実際、5年・10年という長い期間で見ればその通りで、TOPIXの相関係数(0.86〜0.89)が3指数の中で最も高くなっています。

ところが直近1年・3年という短中期の期間だけを見ると、順位が入れ替わります。1年では台湾加権指数(0.92)・韓国KOSPI(0.90)がTOPIX(0.74)を大きく上回り、3年でもわずかながら両指数がTOPIXを上回っています。「自国の指数より海外の指数の方と連動している」という、直感に反する状態が、少なくとも直近1〜3年については実際のデータとして表れているわけです。

理由1: 日経平均は「価格加重」で半導体・AI株に偏っている

この逆転を理解する鍵は、日経平均株価とTOPIXの指数の作られ方の違いにあります。

  • 日経平均: 225銘柄の株価(値段)を単純平均する「価格加重(プライスウェイテッド)」方式。値がさ株(1株あたりの株価が高い銘柄)の値動きが指数全体に大きな影響を与える
  • TOPIX: 東証プライム市場の全銘柄を時価総額で加重する「時価総額加重」方式。銀行・自動車・小売など幅広い業種を株式時価総額に応じてまんべんなく反映する

近年、東京エレクトロンやアドバンテストといった半導体関連の値がさ株、およびソフトバンクグループのような銘柄が値上がりすると、その影響が日経平均に強く表れる一方、時価総額でならされるTOPIXへの影響は相対的に小さくなります。この結果、日経平均とTOPIXの動きが乖離する(いわゆる「NT倍率」が拡大する)局面が生まれます。半導体・AI関連株への物色が強まった局面ほど、日経平均は「日本株全体の縮図」というより「半導体・AI関連の値がさ株バスケット」に近い動きをしやすくなるということです。

理由2: 台湾・韓国の指数もまた「半導体・AI株」に極端に集中している

一方の台湾加権指数・韓国KOSPIも、事情はよく似ています。

  • 台湾加権指数: 世界最大級の半導体受託製造企業であるTSMC(台湾積体電路製造)が指数全体に占める比重が非常に大きい
  • 韓国KOSPI: サムスン電子・SKハイニックスという、AI向け高帯域幅メモリ(HBM)で世界シェアを握る2社が指数の中核を占める

つまり日経平均・台湾加権指数・韓国KOSPIの3つはいずれも、程度の差こそあれ「AI・半導体サイクルに強く連動する銘柄」の比重が大きい指数です。TOPIXのように銀行・小売・不動産など内需セクターまで幅広く含む指数とは異なり、この3指数は共通して「世界的な半導体設備投資・AI投資の拡大」という単一のテーマに強く連動しやすい構造を持っています。

つまり「国」ではなく「テーマ」で動いている

ここまでを整理すると、直近1〜3年の相関の逆転は、次のように説明できます。

  • 日経平均・台湾加権指数・韓国KOSPIはいずれも、半導体・AI関連の主力銘柄が指数の値動きを大きく左右する構造になっている
  • 世界的なAI投資拡大というテーマが強く相場を動かした期間には、この3指数が「同じテーマ株バスケット」として連動しやすくなる
  • 一方でTOPIXは、同じ日本市場でありながら半導体・AI以外の幅広いセクターを含むため、このテーマ相場の局面では日経平均との連動が相対的に弱まる

言い換えると、日経平均は直近1〜3年、「日本株」という国の切り口よりも「AI・半導体」というテーマの切り口で、台湾・韓国株と近い値動きをしていたということです。相関係数は「なぜ連動するか」までは教えてくれませんが、指数の構成銘柄まで踏み込むと、この一見意外な結果にも合理的な説明がつきます。

長期で見ると順位が戻る理由

5年・10年という長期で見ると、TOPIXが再び最も相関の高い指数に戻ります。これは、AI・半導体という単一テーマが相場を支配する局面はあくまで一時的な「レジーム(相場環境)」であり、長い期間で均してみれば、金融政策・為替(円相場)・企業統治改革・国内消費動向など、日本市場に固有の要因の方が最終的に指数全体の方向性を左右する影響力が大きいためだと考えられます。同じ国・同じ通貨・同じ制度の下にある指数同士であるという「地の利」は、短期のテーマ相場では覆されることがあっても、長期的にはやはり効いてくるということです。

統計的な注意点: 1年の相関係数はサンプル数が少ない

この逆転現象を読み解くうえで、もう一つ踏まえておきたいのが統計上の留意点です。当ツールの1年の相関係数は、月次リターンわずか12個から算出しています。サンプル数が少ない相関係数は、1〜2カ月分の特殊な値動きが混ざるだけで数値が大きく振れやすく、5年(60カ月)・10年(120カ月)の相関係数と比べて信頼区間が広くなります。1年の数値差(0.92 vs 0.74など)がそのまま「構造的な関係」を表しているとは限らず、直近の特定の相場イベントの影響を強く受けている可能性がある点には注意してください。この点は、3年の数値でも同じ傾向(TOPIXを上回る)が確認できることから、単なる1カ月分のノイズだけでは説明しきれない、ある程度持続的な傾向である可能性が高いとはいえます。

まとめ

  • 相関ヒートマップ(日経平均)の直近1年・3年のデータでは、TOPIXより台湾加権指数(0.92)・韓国KOSPI(0.90)の方が日経平均との相関が高いという、直感に反する結果が出ている
  • 理由として、日経平均が価格加重方式のため半導体・AI関連の値がさ株の影響を強く受けやすいこと、台湾加権指数(TSMC)・韓国KOSPI(サムスン電子・SKハイニックス)も同様に半導体・AI関連銘柄への集中度が高いことが挙げられる
  • 日経平均は直近1〜3年、「日本株」という国の切り口よりも「AI・半導体」というテーマの切り口で、台湾・韓国株と近い値動きをしていたと考えられる
  • 5年・10年の長期で見ると順位は元に戻り、TOPIXが最も相関の高い指数となる。テーマ相場は短中期的な現象であり、長期では同じ国・同じ市場という要因の影響力が勝る
  • 1年の相関係数はサンプル数(12カ月分)が少なく振れやすい点には留意しつつ、分散投資を考える際は複数の期間を見比べる習慣をつけたい